ミケガモのブログ

カジュアルデッカーの俺がデッキビルド杯入賞作をレビューする【デュエプレ】

はじめに

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2021/6/10-24に開催された、公式企画「デュエプレデッキビルド杯」。 ユーザーは、Twitterに自前のレシピを投稿する。 投稿作品は公式によって選考され、 入賞するとゲーム内の「デッキレシピから作る」のところに紹介されるという新企画だ。

自分は今回、入賞した4作品をカジュアルマッチで回してきた。

この記事では、それぞれのコンセプト、および改造するならどうするかを、 実際に使用した感想を踏まえてレビュー・評価していく。

なお、自分もいくつかのレシピをタグ付けして投稿していたが、 入賞できなかった。 その立場から、入賞のポイントはどこだったのかにも注目したい。

ところで、幸か不幸か、これらのレシピは完全な初心者でも目の届くところに掲載されている。 アイデア勝負のこの企画で野暮なことを言うべきでは無いのだが、 初心者が迂闊に手を出して大やけどを負うと困るので、 レビューの前にデッキの純粋な強さについてもコメントさせていただく。

先に断っておくが、この記事ではデッキレシピの改善点などを容赦なく指摘している。 ご本人、もしくは、そのお知り合いの方がいたら、どうか気を悪くしないでいただきたい。 所詮は入賞できなかった雑魚デッカーの妬みごとである。 もし反論、もしくはここで拾いきれなかったこだわりなどがあれば、ぜひコメントしていただければと思う。

dmps.takaratomy.co.jp

twitter.com

1.『アシガルカディア』

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ND対応。

強さ

カジュアルでの戦績は6-4。 勝ち越せたのはラッキーだった。

デッキパワーは全く高くない。 カジュアルマッチでコンボを決めて満足するため、 もっと言うとレシピを眺めてうっとりするためのデッキである。

SRが12枚、VRが15枚のリッチな構築でもある。 少ない資産でやりくりしたい初心者には、絶対にオススメしない。

コンセプト

「うわー、それで良かったんだ!」というのが第一声だった。 それというのも、自分も前に同じコンセプトでデッキを組んだから(お題に促されてだが)。

mikegamo.hatenablog.com

《魔聖デス・アルカディアは、シールド墓地送りで攻撃クリーチャーを破壊する。 そこに《アシガ・ルピア》が加わると、減ったシールドを即座に回復できる。 無限シールドコンボの完成だ。

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実を言うと、このコンボ自体は、割と思いつきやすい部類である。 というのも、《アシガ・ルピア》の特徴的すぎる能力を活かそうと思うと、 《武者》《ボルカニック・アロー》《魔聖デス・アルカディア》くらいしか選択肢がないのである。

デッキビルダーとしての勝負所は、この2枚のコンボを組み込んだ上で、 残りスペースをどう埋めるかだ。このレシピの場合は、

  • 《悪魔聖霊バルホルス》で半強制的に攻撃させる
  • 《光神龍スペル・デル・フィン》で除去を撃たせない

で、コンボをより強固にしている。

凡人なら「流石にやりすぎか……?」と足踏みしてしまうようなカードまでぎっちり詰め込んだ、夢のある構成だ。 コンボとそれを補強する要素で、とことんロマンを追いかける姿勢が評価されたのだと思う。

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改造案

回してみて思ったのが、《ロスチャ》《ゲート》《デル・フィン》のギミックが意外と強かった。 前の自分のレシピだと、呪文ロックは《聖霊アルカディアス》が担当していた。 しかし、今は《ボルフェウス》&《ヘヴンとバイオレンスの衝撃》セットが流行っているので、 呪文を完全に封じる《デル・フィン》の方が良さそう。

このレシピの尖った点、その1。 コンボパーツの《デス・アルカディア》が3枚、 《アシガ・ルピア》に至っては2枚しか入っていない。 作成者さんはコンボが決まりにくいことを知っていて、それに依存しないように気を使っているのかもしれない。

尖った点、その2。 ドローソースが、《封魔妖スーパー・クズトレイン》の2枚しか入っていない。 コントロール系の相手には、まず勝てないだろう。 ただし、こういう尖ったコンセプトの場合、 一部のデッキを切ってでも有利デッキへの勝率を確保するのもアリっちゃアリか。

自分の好みに合わせて、丸っこく改造するならこう。

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《知識の精霊ロードリエスを採用し、手札補充できるようにする。 《ロードリエス》が除去札を吸ってくれれば、本命の《デス・アルカディア》が倒されにくくなる。

《聖騎士ヴォイジャーも採用。絶対4の方がいいんだけど、スペースが足りない。

《ロスチャ》《ゲート》《デル・フィン》の枠にまで手を出すなら、こうする。

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2.『マッドネスティラノ』

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ADのみ対応。 スタン落ちカードは、《サンフィスト》《デラセルナ》。

強さ

カジュアルでの戦績は6勝10敗。辛い。

【マッドネス】自体が地雷デッキなので、これもガチ環境には向かないだろう。

構成カードは汎用性低め。 一生【マッドネス】で生きていくという変な覚悟を背負った人でもない限り、 資産不足のプレイヤーにはオススメできない。

コンセプト

イデアが神懸っている。

《闘竜霊騎アントワネット》は、 自分からのアクションが少ないマッドネスデッキにおいて、 ビートダウンで圧をかけるカードである。

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とはいえ、相手からしてみれば、1ターンに1枚ずつシールドを割られる程度のことは怖くない。 「トリガーで処理できたらいいな~」という思考のもとで、 残りシールドが1~2枚になるまで《アントワネット》を放置するのが通常である。

そこで出てくるのが、《覇竜凰ドルザバード》。 突然トリガーを封じながらシールドを3枚ブレイクし、一気にゲームエンドまで持って行く。 自分も、初見でこのコンボを食らって即死した経験がある。

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テキストに直接的なシナジーは無いものの、カードとデッキの性質が非常にマッチしている。 こういうアイデアは簡単には出てこないので、見事というほかない。 【マッドネス】はテンプレのファンデッキだが、ここまで美しいコンセプトを見せられると唸ってしまう。

公式コメントにも、

《霊騎秘宝ヒャックメー》のデッキは沢山の方が投稿して下さりましたが、その中でも特に様々な戦略が組み込まれ、完成度が高いデッキでした!

とある。 激戦区の【マッドネス】というデッキタイプの中で、 このデッキはひときわ異彩を放っていたのだろう。 戦略のアイデア性が入賞の決め手だったようだ。

《無頼聖者サンフィスト》は、マッドネス要員兼、 序盤の《アントワネット》ビートの補助に使うカード。 これを入れたいがためにAD用構築になっていると思われる。

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改造案

批判を恐れずに言おう。

全然回らない。

イデアは文句なしだが、デッキの細かい所に改善点があるようだ。

まず、《アントワネット》が初動かつ主役なのに、青が10枚しか入っていない。 3コストカードを安定して使いたい場合、入れるべき枚数目安は14枚。 せっかく《アントワネット》が活躍するのだから、真っ先に青を増やすべきだ。

次に、おそらく《ボルガウルジャック》がいらない。 マッドネスデッキの勝ち方は、メインがカウンターで、サブがなんちゃってで殴り勝つビートダウン。 《ボルガウルジャック》の盤面制圧は、どちらにもそぐわない要素である。 ここは《ドルザバード》を出すことに集中した方が良いと思う。 《ボルガウルジャック》を入れたい場合、マッドネス要素をもういくらか薄くして、 ティラノ・ドレイクデッキに寄せるのが良いだろう。

さらに、《ボーンブレイド》の感触も微妙だった。 《ボーンブレイド》で《アントワネット》を出すということは、 既に《アントワネット》の効果でマッドネスクリーチャーが出ている可能性が高い。 その優勢な状況で、もう一度《アントワネット》を吊ってくる必要は無いだろう。

この辺りを考えた改造案はこう。

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青の枚数をきちんと確保。 《烈流神》を入れたことで目新しさは減ったが、 手頃な青が他にいないので致し方なし。 《ドルザバード》で削った後の一押しにも強いはずだ。

《リドロ》が2枚だと流石に少ないと思われるので、増量。

せっかくのティラノ・ドレイク軸なので、 《ペリオンブレス・ドラグーン》を入れてみた。 《ヒャックメー》とセットでマッドネス向けに収録されたはずのこのカード、 なぜか使っている人を見かけない。 相手に攻撃を強制させて、《リドロ》やトリガー《ヒャックメー》を誘発するべし。

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3.『ジェントルアイ』

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ND対応。

強さ

カジュアル戦績、7-3。 自分の感覚とマッチしていて、とても回しやすかった。

とはいえ、これもカジュアル向け。 それもそのはず、《アクア・サーファー》以外のクリーチャーは全て、 環境では見かけないマイナークリーチャーである。 メインアタッカーが《スケル・アイ》、最高出力は《ナーガ》。 カードパワーに頼らず、デッキパーツをフル稼働させて賢く戦うことが求められる。

構成カードは安いものが多いが、それでも大量生成してこれを組むのは危険。

コンセプト

さっきの『マッドネスティラノ』が発想の鬼だとすれば、 こちらの『ジェントルアイ』は構成の鬼。

デッキのスタート地点は、 《無頼王機スケル・アイ》で《奇術ロボ・ジェントルマン》を持ってくると、 そのまま《ジェントルマン》を捨てて2ドローできる というコンボ。

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次に、捨てた《ジェントルマン》を再利用したいという欲が出てくる。 墓地回収役として選ばれたのは、《魂縛虫ネクロ・ワーム》。 cipで墓地回収のできるクリーチャーとしては最軽量だ。

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このままだとパワーが足りないので、大型アタッカーを用意したい。 そこで、パラサイトワームの《ネクロ・ワーム》と青の《スケル・アイ》から進化Vできる、 《邪魂王ナーガ》を採用する。

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2種類目のパラサイトワームとして、軽量除去のできる《斬撃虫ブレードワーム》。 2種類目の青クリーチャーは、《ジェントルマン》を捨てられる《弾丸透魂スケルハンター》

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4コスト帯が増えたので、《ライフ》《石板》で2→4ルートを安定させる。 《サーファー》はもちろん確定で、色調整のため《デモハン》ではなく《ナチュトラ》。 空いた2枠に、緑の確保と軽量除去のため、《霊鳥と水晶の庭園》。

構築は以上で終了だ。

対アグロは、《ブレードワーム》と《ナーガ》で細かい除去を浴びせて勝つ。 トリガーも16枚と厚い。

対コントロールは、《スケル・アイ》《ジェントルマン》でリソースを確保しながら削る。 「ブロックされない」持ちが《スケルハンター》《スケル・アイ》《ナーガ》の3体もいるので、 ブロッカーが並んでも大丈夫だ。 火力に弱いのだけが難点だが、それは割り切るしかないだろう。

構築の一貫性、パーツごとの細かい噛み合い、デッキに必要な要素、 全てが文句なしに満たされている。 見た目の派手さこそないが、満点級の完成度を誇る構築である。 完全に一本取られた気分だ。

これが良いデッキだと見抜けるようになれば、 一流デッキソムリエ(←?)になれる日も近い。

改造案

完成度が高すぎて、変えたいカードが見当たらない。 候補カードを挙げるなら、

  • cipドローで《ナーガ》の種になる《アクア・ハルカス》《クゥリャン》
  • 軽量メカオーの《月光電人オボロカゲロウ》
  • 《ナーガ》の種として定番の《妖蟲麗姫ドナ》

くらいか。 もっとも、この辺りを作成者さんが検討していないはずがない(新弾の《オボロカゲロウ》除く)。 このまま行くのがベストか。

……ヨイショしまくったけど、カードパワーの壁はあるからそこだけ注意。

4.『5cびっくり箱ビート』

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ADのみ対応。 ただし、現時点でスタン落ちしているのは《幻想のジルコン》1枚のみ。 ND対応にするのは簡単。

強さ

カジュアル戦績、6-6。

デッキ基盤としては、今回の4デッキの中で最も強い。 しっかり改造すれば、マスター到達まで目指せるデッキタイプだと思う。

といっても、環境一線級のデッキとはとても言えない。 やはり、どちらかというとカジュアル向けだろう。

コンセプト

基盤は、《鎧亜の氷爪メフィスト》《霊翼の宝アルバトロス》の2枚を搭載した【多色ビート】。 破壊すると場のクリーチャーが増えるこの2枚を軸に、粘り強くビートするのが基本となる。

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さらに、 この2枚と相性の良い《魔魂葬のサードニクス》《金色の精霊クロスヘイム》も組み合わせて、 変幻自在の戦術を取れるのが強みとなっている。

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知ったような口を聞いているが、私が【多色ビート】というデッキ基盤を認識したのはつい最近の事。 作成者さんは、いち早くそのシナジーに気付いて構築していたわけだ。 私なんかよりもずっとセンスが良い。

軽量の多色クリーチャーは、種類をあえてバラして色々積んである。 メフィスト》からは何が出るか、使っている自分ですら分からない。 まさに「びっくり箱」なギミックだ。

そのパターンの多さは、病みつきになること請け合い。 運営チームからも、「使えば使うほど味が出るデッキ」というコメントが付いている。

改造案

このデッキを改造する場合、自分が最近組んだ【多色ビート】のレシピが参考になると思う。

mikegamo.hatenablog.com

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具体的には、以下の点に改良の余地があると考えている。

まず、《フェアリー・ミラクル》。

このデッキには、《ミラクル》から繋ぎたい6~8マナ帯に、使いたいカードが無い。 1ターンに2枚のカードを使えるようにはなるが、 手札補充が薄めのこのデッキだと、それができるかは引きと相手に依存する。

次に、多色カードの枚数。

このデッキは、驚異の多色30枚構成。 《メフィスト》のロスト・プリズムが安定するようにはなるが、 これほど多色が多いと、マナカーブ通りに動けずにつっかえてしまうことが多いと思う。 手始めに、《花籠》の枠は全て単色トリガーでも良さそうである。

続いて、突破手段。

このデッキは、ブロッカーを大量展開された場合にできることが、 《アルバトロス》による強行突破しかない。 強引に勝ちを拾うため、 《スパーク》《クリムゾン・メガ・ドラグーン》《ガルベリアス・ドラゴン》《烈流神》などの、 ブロッカー突破手段を入れておいた方が良い。

最後に、軽量クリーチャーの種類の多さ。

デュエプレに探索がある限り、 《メフィスト》《アルバトロス》で出てくるクリーチャーの種類は、 なるべく抑えるのがセオリーである。

以上4点、コメントさせていただいた。 もっとも、これらはいずれもデッキの特色であり、良い所でもある。 特に、軽量クリーチャーをバラして積んでいる所は、このデッキの重要なコンセプト。 作成者さんのアイデアをリスペクトするなら、あえて弄る冪ではないかもしれない。

ただし、これだけは絶対にやめた方が良いと断言できるのは、 《ジルコン》《マクスヴァル》の同時採用。 《アルバトロス》《メフィスト》でアタッカーを2体出せば勝てる!というシーンで、 この2枚が探索の2枠に入ってきたら大惨事だ。 実際、それでデュエルを落としかけたこともある。 《アルバトロス》の探索結果を見て頭を抱えている間に相手がリタイアしてくれて事なきを得たが。

まとめ

4デッキとも、非常に独創的で面白いデッキだった。

デッキの審美眼に自信がある自分から言わせてもらうと、 これを選んできたスタッフは相当見る目がある。 今回入賞した4名のプロフィールを拝見した限り、 純粋にデッキレシピのセンスが評価されていると見て良さそうだった。 多少の運は絡んだだろうが、公平な選考が行なわれたのは喜ばしいことである。

今回の選考で重視されたのは、

  • ガチデッキには無いオリジナリティ
  • 取れる戦術の多様さ

の2点であるように思う。

テンプレのガチデッキをアレンジしたレシピや、 マイナーSRを活躍させるためのレシピは、今回1つも選ばれていない。 デッキの基盤を一から用意して、 さらにそこにどれだけ戦術要素を詰め込めたかを競う、 真のアイデア勝負だったといえる。

以下、選考に関して気付いたことをメモしておく。

  • AD限定構築でも大丈夫。
  • レシピの複数投稿も可。
  • 4つ中3つが、期間初日に投稿されていた。
    • 投稿が期間初日に偏ることを考えると妥当か。

おわりに

他人の作ったレシピを回すのは、気楽でいい。 このギミックいいじゃん!という風に、使っていく中で新たな発見もあった。 一方で、「回んねぇぞ! 作成者出てこい!!」と、頭が爆発しそうになることもあった。 ガチでもカジュアルでも、 自分自身が納得のいくレシピであるかどうかを吟味してから使いたいと、改めて思った。

対戦動画

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