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総評
アウトレイジvsオラクルの弾。 サムライvsナイトの10弾、ハンターvsエイリアンの16弾のように、 どちらかと言えばデザイナーズ色が強いパックである。 しかしながら、デュエプレ参入にあたって複雑さが増した「PSドロン・ゴー」、 【墓地ソース】用に収録された墓地利用パーツ、 カードタイプがクリーチャーでありながらゴッドリンクを持つ《ヨミ》《イズモ》があったおかげで、オリジナルデッキも組みやすいラインナップだった。
サブテーマは、リバイバル枠のエンジェル・コマンド。 新規パーツの数はごく限られていたが、19弾で闇エンジェルが多数収録されたおかげで組みやすかった様子。
弾のテーマ以外の注目カードは、
- 軽量の自軍2体破壊《学校男》
- 色々出せる《シューゲイザー》
- 初のターンスキップである《クロック》
- どこからでも墓地に送って利益を生める《キューブリック》
- 墓地肥やしのみならずデッキ掘削にも長けた《メーテル》
- cipとpig、連れてくるクリーチャーで活用方法が多岐に渡る《レヴィヤ・ターン》
- ターン開始時2体破壊、早めに出せるドラゴン/アンノウンの《ドレッド・ブラッド》
- マナ→デッキトップ仕込みが特徴的な《メリーさん》
などなど。
今回アツかった過去カードは、
など。
デザイナーズ弾だと思っていたのだが、今回はいつにもましてレベルの高いデッキが多く投稿されていた。常連の凄腕ビルダーのみならず、様々なプレイヤーから独創的なアイデアが数多く見られた。 投稿数も909個と、過去2番目に多い。開催期間が11日といつもより1日長かったのもわずかに効いているかもしれないが、とにかく大変な盛り上がりを見せている。
入賞作レビュー
入賞作のアイデアおよび基盤は以下の通り。
- 《グレイテスト・グレート》《学校男》のループ
- 《メーテル》《ミスト・リエス》で割り込みマッドネス
- 《カツキング》ドロンゴー後に《フルスロット・サージェント》でギアクロス
- 《デストラーデ》下で相手ターン中に《ストームG》、《クロック》を連鎖する
……いきなりどうした。 選出傾向がコアな方に振り切れて、非常にテクニカルなコンボデッキが選ばれた。
パック | 解説文字数 |
---|---|
20弾 | 4,600 |
19弾 | 3,300 |
18弾 | 3,200 |
17弾 | 2,800 |
また、今回は公式による入賞デッキ解説文が非常に充実していた。 分量が多いという声を聞いたので、大雑把に数えてみた結果が上の表。 過去3弾分がどれも4デッキ合計で3000文字前後の解説だったのが、今回は約1.5倍の4600文字となっている。 複雑なコンボが沢山入賞し、それが丁寧に解説されているというのは類を見ない。
1は《グレート》から《学校男》を引っ張ってくることで無限ループが組めるというアイデア。 完全な無限ループが入賞するのは初である。 今までも《ゾルゲ》を絡めると《グレグレ》《シンフォニー》ループは可能だったのだが、《学校男》登場によって非常にスマートにまとまった。 無限ループすることだけにとどまらず、勝ち筋をしっかり見据えている。
2は自分のデッキ。マッドネスは相手の攻撃に反応して展開するのが普通だったが、これは相手のクリーチャー出しに反応できる。 解説はこちらの記事で。
3は初めて無限のパワーを持つ《カツキング》に《オーガ・フィスト》をクロスしようというアイデア。 ドロンゴーとクロスのタイミングを無理矢理合致させる、これまた独自性の強いコンボ。
4は《クロック》を相手ターンに出してしまおうという発想の一つ。 《ストームG》は相手ターン開始時に出せるので、成功すれば相手ターンのほぼ全てをスキップし、さらに《ラスト・ストーム》へすぐさま覚醒できる。 事前に仕込めなくても《ストームG》を重ね着して強引に《クロック》を掘りに行くギミックは、おそらく重ね着《アクア・スクリュー》から着想を得ている。
入賞作は4つとも、ターン中のステップを超越したギミックを持っている。
- アタックステップの無限ループ
- 相手メインステップに起動するマッドネス
- アタックステップのギアクロス
- 相手ターン開始時の覚醒&そこからの連鎖
ステップの超越を組み込むと、普通ならできない動きが体験できる。 シンプルな例では、メインステップのカード使用と、アタックステップの攻撃時効果を組み合わせるといった具合だ。 今回の入賞作はどれも変則的すぎるが、通常のデッキビルドでもぜひ意識しておきたい概念である。
投稿作ピックアップ
声を大にして言おう。バケモンデッキが多すぎる。 もとは埋もれさせておくには惜しいデッキをぽつぽつと拾うコーナーだったのだが、最近は力作が増えすぎてここだけに収まらない。 現に、今回の自分の「お気に入り作品フォルダ」には、ゆうに60個を超えるデッキレシピが保存されている。
傑作なアイデアをなるべく多くの人に見てもらうため、時間が許す限り対戦動画にして世に送り出させていただいているが、20弾ビルド杯の全てを網羅することはとても叶いそうにない。 今回は暫定的に、絶対に動画に残すと決めたデッキ以外から、20弾に特有だったデッキアイデアを紹介したい。
『8軸ミセス』
表記上のコストが高いエグザイルを活用し、今まで不可能だったコストで《ミセス・アクア》を運用する。 《プレキリ》や《オニウッカリ》など、類似のクリーチャーが複数いるのがポイント。 実は7軸も投稿されていた。
『ドラピクロック』
《ドラピ》の自爆効果が発動する前に《クロック》でターンを飛ばしてしまう。 特に《ゼニス・シンフォニー》からの《グレイテスト・グレート》タイプは、《グレート》が手札に戻るのも防げる。 他には《メフィスト》も人気だった。
『子供アルメリック』
《アルメリック》でトリガークリーチャーを出し、それをSA化させて展開を連鎖させる。 このデッキでは、SA化を《その子供、凶暴につき》が担当。以前は《ギャラクシー・ファルコン》でハンターをSA化するアイデアがあった。 これは19弾の時点で可能なコンボだったのだが、なぜか20弾で開拓された。
『高飛車グライス』
《高飛車姫プリン》は、《パドンナ》と組むパターンが王道。 しかし実は《グライス》でも似たコンボが可能である。
『ヒドラエグザイル』
《ダーク・ヒドラ》とドロンゴーの組み合わせ。こちらは《ゾルゲ》で無限にバトルするギミック。 何をゴールにすればよいのか、自分でもいまひとつピンときていない。
『無色アタックチャンス』
新規無色アタックチャンスの《トリプル・ゼロ》を、《シンフォニー》と一緒に撃つ。 シンプルだけどそれがいい。
『ガントラシラヌイ』
【ガントラビート】を基盤に、旧来《ガルベリアス》が入っていた枠を《シラヌイ》に置換。 適度にドリームメイトを出せる《メイ様》、《リンリン》とその上振れとしての《デカブル》《コブル》。 新弾要素と古いデッキが上手く融和している良作。
『メテオラソナタ』
《メテオライト・リュウセイ》は《永遠リュウ》と比較されがちだが、打点を並べつつ全タップで攻めに行けるのは固有の強みである。 《鬼セブン》で《メテオライト》自身、およびそれを吊ってくる《バベルギヌス》がトリガー化し、実質《スパーク》が撃てるギミックがオシャレ。
おわりに
入賞の喜びは別記事で語っているので、ここではひとまず置いておく。
今回の入賞傾向は非常に「俺得」なのだが、これは必ずしもメリットのみではない。 自分が良いと感じるものだけが取り上げられるということは、自分と異なる感性に触れる機会を失っていることに他ならないからである。 ビルド杯のたび、自分自身をはじめとする数々のプレイヤーがデッキを公開し合うことで、界隈全体のビルディング力は着実に向上している。 それはとても素晴らしいことだが、それは一方で特定の思想が根付きかねないということである。 自分で言うのもアレだが、たとえば記事や動画という発信手段を確立しているミケガモは、思想的な影響力が強いプレイヤーの一人だ。 そういったプレイヤーの発想やチューニングが広まりすぎると、それ以外のアイデアが出てきにくくなる。 発想の固定化は、膨大なカードプールの可能性を狭めてしまいかねない。 お互いの技術を高め合いつつも、常に斬新なアイデアが生まれるような体制が続くことを願う。