はじめに
いつもブログ記事を楽しく読ませていただいております。 考察記事のお題なんですけども【シノビ】ニンジャ・ストライクが未実装について考察と、もし実装されるならどういった調整になるかのミケガモさんなりの考えを読んでみたいです。
https://odaibako.net/detail/request/c62ce80b-4e9d-4460-baf8-1363733aeb55
シノビ。
本家で大活躍だった/しているにも関わらず、デュエプレには実装されていない日陰の種族である。 正史とは違ったタイミングで出てくる可能性もないではないが(例:サバイバーやクロスギア)、 シノビの場合は元シノビがリメイクされて非シノビのオリカになっているものが多い。 これからの収録は絶望的と言っていいだろう。
サイレントスキルやダイナモはまあいいとして(よくない)、 「シノビ」「ニンジャ・ストライク」ほどの存在感があるギミックが実装されないのは、 相当な事情があると考えるべきだ。
この記事では、そんなシノビについて考察する。
説明
「ニンジャ・ストライク」(以下適宜"NS")は、相手の攻撃(またはブロック)に合わせて手札からタダで場に出す能力。 大抵は何らかのcip能力がついていて、出たときに戦況を有利にする。 ニンジャ・ストライクを使ったターンの終わりにはデッキボトムに帰っていくため、直接のボードアドバンテージにはならない。
詳しい説明はDM wikiを参照。
この能力を持つカードは全て「シノビ」というサブ種族を持っている。 一部、NS能力を持たずシノビをサポートするだけのシノビも存在するが(←《バイケン》がそう)、 そういうカードの使用率は極めて低いため、「シノビ」と言っただけでもニンジャ・ストライク持ちのことが想定されている場合が多い(以下、本記事でもそうする)。
シノビの特長
シノビの一番のメリットは、ノーコストで確実に使える防御札である点。 防御にマナコストを払わなくていいのは、コントロールにとってはとてもありがたい。 発動に運が絡むS・トリガーと違って、シノビは手札に持っておけば必ず使える。 《デーモン・ハンド》と比べると出力は落ちるが、有効な状況が来るまで好きに待てるという点では、 むしろS・トリガーよりも強いとすら言える。
不意打ちで出せば相手の計算を狂わすことができる点も強い。 殴り切れると思ったらすんでのところで止められたり、クリーチャーを殴り返したらシノビのせいでバトル負けしたり。 逆にシノビを警戒しすぎて、プレイが歪むこともしばしばである。
カード自体の強さとはちょっと違うが、環境とプレイングに与える影響が絶大であることも指摘しておく。 例えば《威牙の幻ハンゾウ》は、パワー6000以下のクリーチャーで攻撃する際には必ず頭に入れておくべきカード。 色の制約がないがゆえにどんなデッキにも入りうることから、気配がなくてもケアが求められる。
デュエプレに実装できない理由
シノビがデュエプレに来れない最大の理由は、ゲームテンポを阻害するから。 シノビは、非公開領域のカードを発動する権利を、非ターンプレイヤーが握っている。 紙版のシノビを忠実に実装すると、攻撃するたびに相手に思考時間が与えられることになる。 これは、あまりにもテンポが悪い。
紙の対面デュエルなら発動宣言がしやすいし、相手の所作を観察してブラフかどうかを探ることもできる。 しかしDCGだとそういう要素はなく、ただ相手の処理を待つだけ。 ゲーム体験としては面白いものではない。
ところで、最近リリースされた『遊戯王マスターデュエル』では、手札誘発カードが普通に実装されていてびっくりした。 あちらは遊戯王OCGのカードをそのまま再現しているのが売りなのと、元から罠・魔法でカードプレイを打ち消すことが多いゲームなので、プレイヤー側にもそういう耐性があるのかもしれない。
ゲームバランスの点では、シノビが防御側を著しく有利にするのが問題。 デュエプレはリリース以降、1戦が長引きすぎないように攻撃側のカードをインフレさせてきた。 シノビはこの方針と逆行するギミックなので、都合が悪い。 盤面制限のあるデュエプレでは、場を広げてシノビを押し切るのも難しい。
対戦ゲームとして見た場合、シノビを覚える重要性が高いのも厄介。 各シノビが効果的に働く場面を把握しておかないと、構築やプレイングに大きな差が出てしまう。 プールの追加が早く、ユーザーの習熟度も幅広いDCGにおいて、 特定カードの知識が勝敗を分ける環境は、あまり望ましくない。
最後にやや個人的な意見だが、シノビをケアするためにオーバーキル盤面を作る必要および口実ができてしまうのがイヤ。 白熱した試合に感服し、気持ちよくトドメを刺してもらおうと負け確盤面でターンを渡したら、 相手視点「シノビで返されるかも……?」と映って無意味な過剰打点を組まれて冷める、とか。
デュエプレに来るなら
テンポの改善が一番の肝。対処すべきは、
- 非ターンプレイヤーが
- 非公開領域から
- 発動の選択権を持つ
という特徴。ただし、いずれもシノビを構成する重要要素でもある。 カードイメージを損なわないようにするのが大変。
無難なのは、「各ターン一度だけ、相手が攻撃してきたときに勝手に飛び出す」という仕様だと思う。 2枚以上発動可能な場合はランダムで飛び出る。 選べればいいけどデュエプレだと多分そうならないし、 仮に選べたとして2枚以上持っているのがバレるというデメリットがある。
シノビをキープするプレイングはできなくなるが、使えるだけ感謝ということで辛抱するしかなさそう。 腐るのが気になるなら、cip効果を2つつけて選択にする。
もう1個考えたのが、発動を自分でコントロールし、かつ相手にそれが分かるようにする予約方式。
自ターン中に、正規コストよりも少ない「NS予約コスト」でシノビを召喚。 相手が攻撃してきた場合、シノビの効果を発動するか選択できる。 発動したらそのターンの終わりにボトムに行き、発動しなかったor攻撃されなかった場合は相手ターン終わりに手札に戻ってくる。
コストの払い分けはO・ドライブと似た仕組みで実装できるだろう。
書いてみて思ったが、全くの別物。
戦国編シノビの評価
お題には一通り答えたと思うので、今しか語るタイミングがなさそうことを語る。
《光牙忍ハヤブサマル》
何にでも《ハヤブサマル》を入れるDMP。 《シェイパー》入りの【青単速攻】に積んでいる人すらいた。 デアリガズのようなカラーリングでも、簡単にブロッカー要素を補える。
手札を1枚切るだけで攻撃を1回無効化できるのは、よく考えるとイかれてる。 墓地回収とも相性が良く、特に《ダーク・ヒドラ》と組めば疑似無限ループ。 《ヒドラ》は《ハヤブサマル》登場の1ヶ月後に殿堂入り、さらにその7ヶ月後にプレミアム殿堂入りしている。
地味に自分のクリーチャーならなんでもいいのがポイント。 シールド・フォースを剥がされ置き物と化した《PG》が突然9000ブロッカーになったり、 《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》をブロッカー化してバトルに勝たせたりと、プレイングの幅も広かった。
《威牙の幻ハンゾウ》
パワー6000以下の人権を剥奪したカエル。 「《ハンゾウ》に焼かれるから」という理由で採用を見送られたカードがどれだけあったことか。
バトル時に出して6000未満のパワー差をひっくり返す場面も頻出。 《ハンゾウ》4積み時代はトンカチするのがめちゃくちゃ怖かった。 こっちのブロッカーにパワー負けしている雑魚が突然殴ってきて、手札に《ハンゾウ》があるか疑心暗鬼になることもしばしば。 パンプするだけの緑シノビに全く出番がなかったのもコイツのせい。
NS前提なら不要なはずなのに、何故かシールド身代わり効果がついている。 6000火力として手出しする場面も割とあったし、詰めの時地味に役に立っていた。 殴ってくる《ハンゾウ》を確実に処理できるのは《ハンゾウ》。
性能面では《ハヤブサマル》《ハンゾウ》がツートップだった。 そして仲良く一緒に殿堂入りした。
《霧隠オロチ》
【不滅オロチ】で活躍し、殿堂入り。 規制されるのが割と早かったためか、自分の中では印象が薄い。 デカブツを集める必要のある富豪デッキだったせいで、自分の周りでお目にかかる機会も少なかった。
《オロチ》は純粋な防御札として見ればちょうど良い性能で好きだった。
《光牙忍ライデン》《光牙王機ゼロカゲ》
《ハヤブサマル》のせいで影が薄いが、どちらも確実に1体止めてくれる良カード。 《ライデン》は手出しでも使えるのが良い。 《ゼロカゲ》は状況によっては《ハヤブサマル》よりも強いので、個人的に評価していた。
《光牙忍ソニックマル》
見たことも入れたこともあまりない。 防御札としては自分のブロッカーを起こす役目があるが、 どちらかというと相手のチャンプブロックに合わせて出し、実質的に打点を増やすのが仕事。
そしてそれよりも、《バグナボーン》などと組むコンボ用カードのイメージ。
《霧隠テンサイ・ジャニット》《威牙忍ヤミノザンジ》
積んでる人が多かったけど、《ジャニット》は一時しのぎにしかならないし、 《ザンジ》は範囲が狭くて好きじゃなかった。
《威牙忍ヤミカゼ・ドラグーン》
渋くて好き。 《ヘヴィ・メタル》で詰むファンデッキにメタとして入れてた。
《威牙忍クロカゲ》
なんでNSついてるんだろう。一応《ウエスタン・バレル》の上位互換だけど、 ピーピング《ジェニー》が使える環境で選ばせハンデスする意味も無い。
《不知火グレンマル》《轟火シシガミグレンオー》
当時は赤にまともなカードがなかったため、色合わせとして重宝されていた。 具体的には、【5cコン】の赤マナとして1枚採用されたりされなかったり。
緑シノビ
芸がないにも程があるだろ。
S・M・L・XLみたいな並び、かと思いきや《ジライヤ》はシノビしかパンプできないというモノホンのポンコツ。
《霧隠蒼頭龍バイケン》
【ヒャックメー】を大会用地雷デッキに押し上げたカード。 これ以降、マッドネスはほぼ「相手カードによって捨てられた時」という条件に変わり、 【ヒャックメー】が強化されることはなくなった。 それだけバウンスが強かったということらしい。
このカードと言えば、2008年の全国大会優勝デッキ『カウンターバイケン』が有名。 このデッキが優勝してからDMvaultで『カウンターバイケン』の投稿が激増し、 それを「みんなバカだなぁ」と思いながら眺めていた。
シノビの功罪
戦国編はクロスギアを使うサムライが目玉だったこともあって、ビートダウンを推奨する方針だった。 実質SAのマナ進化や、殴り合いに持ち込めば怖くないシールド・フォース、城などのギミックがその例だ。
しかし、戦国編2弾で出たシノビのせいで防御手段が増え、結果的にコントロールが優位なままだったというオチがある。
実を言えばシノビだけが悪いわけじゃなくて、
- 殴り合いに持ち込む以前の《ソウル・アドバンテージ》
- 硬すぎてフォースを割れない《不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー》
- ブレイク置換で粘り強い上にシノビとも相性抜群の《ハッスル・キャッスル》
など、ビート推奨という割にビートに手厳しいカードが多数あったのも問題。 そして、この辺りのパーツをすべて取り込んだのが【ネクラギャラクシー】である。
デュエプレ転生勢
最後に今更ながら、デュエプレにオリカとして参戦しているシノビを確認しておく。
- 《霧隠蒼頭龍バイケン》→《蒼神龍バイケン》
- 《威牙忍ヤミノザンジ》→《死神ヤミノザンジ》
- 《霧隠オロチ》→《オロチム》
- 《怒流牙 佐助の超人》→《怒流牙 サルトビ》
NS持ちは全てトリガー持ちとなり、シノビ的要素を少しでも拾おうとしている。 《バイケン》はシノビデッキ相手にハンデスすることの裏目を作るカードだったが、 誰も「シノビデッキ」なんて組んでおらず、専らマッドネス要員でしか使われていなかったので、 シノビじゃなくなっても支障がない。
ニンジャ・ストライク持ちのカードは戦国編以降長らく出ていなかったが、 2017年以降ぽつぽつと収録されるようになった。 特に、2020年7月発売のDMEX-12では、まとまった数の新規シノビが収録された。
だいぶ先な上に可能性は薄いだろうが、シノビがデュエプレに来るタイミングはまだ残されている。
おわりに
シノビの他に参戦できていない大型ギミックとしては、
- 進化クロスギア
- 4枚以上のゴッドリンク(五元神・神帝・六神など)
などがある。
前者は、腐りやすさと元効果のしょうもなさ。 後者は、3体以上がリンクした状態で除去を食らったときのテンポロスが厳しいことが課題。
コイツらが来れていないのは実戦レベルに引き上げるのが難しいためであって、 強すぎ・面倒すぎるシノビとは事情が違うと思っている。 いつか来れたらいいね。