ミケガモのブログ

【コラム】カジュアルデッカーはガチデッキを組んだほうがいいのか

問題

カードゲームをカジュアルに遊ぼうとする人に向けて、時々こんな言葉が投げかけられる。

「カジュアルデッカーが組むカジュアルデッキより、ガチデッカーが組むカジュアルデッキの方が出来が良い」

ここでは便宜上、上記の理論を「ガチ構築至上論」と呼ぼう。 仮にガチ構築至上論が真実なら、全ての人間はカジュアルデッキを組む手を止め、ガチデッキを作るべきだということになる。 一体、カジュアルデッカーはどうすればいいのか。

議論

なぜガチ構築至上論が説かれるかといえば、ガチデッキは構築の基礎を学ぶのに適しているからである。 言わずもがな、テンプレのガチデッキは勝利のために最適化されている。 カードコストやドローソースといった基本要素は、合理的な配分になっている。 加えて、最新環境で通用する強力なギミックやデッキ基盤も織り込まれている。 デッキ構築の基礎として、カジュアル構築でも大いに参考になるだろう。

こうした基礎を抑えたガチデッカーがデッキを組めば、ある程度の完成度は保証される。 これに対し、カジュアルデッカーが基礎を学ばずに我流でデッキを組めば、完成度が劣ってしまうのは仕方のないことである。 ガチ構築至上論は、こうした悲劇の可能性を指摘している。

一方で、構築の基礎はカジュアルデッキから学ぶこともできる。 確かに、ガチデッキは洗練されたテンプレ構築が存在するのに対し、カジュアルデッキの強さや完成度はバラつきが大きい。 それでも、質の高いカジュアルデッキには基礎がきちんと備わっている。 なにもカジュアルデッキを組むためにガチデッカーになる必要はない。

それこそ、カジュアルデッキでしか学べないこともたくさんある。 カジュアル向けのカードプールは、ガチ環境のそれより遥かに広い。 本気で極めようと思えば、膨大な純粋な知識量が必要なのは明らかだ。 当然、ガチデッキ以外の知見も多く蓄えなければならない。

さらに、カジュアルデッキには特有の作法や思想が入り込む場合がある。 具体的には次のような要素である。

  • デッキテーマの尊重
  • 類似カードとの差別化
  • 仮想的を狭く限定する
  • ランダム要素の信奉/排除

ガチデッキとは異なり、カジュアルでは強さが絶対的な指標とならない。 この辺の塩梅は、ガチデッキからは決して見えてこないものである。

以上の観点を踏まえ、最も重要なのは、他人の良質なレシピをたくさん見ることである。 最初のうちは、レシピの良し悪しを自分で判定することは難しいかもしれない。 その場合は、手当たり次第にデッキレシピを漁るのでも構わない。 構築の基礎さえ抑えてしまえば、量は質に勝る。 ガチカジュアル問わず、多くのデッキレシピを研究することが、構築力を上げるための近道である。

とはいえ、実際には独力で一つのデッキテーマを練り続けたいという人もいるに違いない。 こうした楽しみ方は、構築力向上の最適解では無いかもしれない。 しかし一方で、プレイヤーとしてのアイデンティティの自覚、ひいては長期的なモチベーションにも繋がる。 ある種の「こじらせ」を持ちながらやり込んでいけば、継続的な成長が見込めるだろう。 ただ、時々は他人のアイデアや構築を見に行くことを忘れないでほしい。

文句

結局のところ、ガチ構築至上論は、「やり込んだ人ほど良いデッキを作る」ということを言っているだけのようにも見える。 方向性がカジュアルだとしても、真面目に研究と考察を重ねれば、デッキ構築は上手くなるに決まっている。

それに、ガチデッカーと一言に言っても、実際のガチ勢には色々なタイプがある。 新環境の開拓が得意な人。環境が整ってからのデッキ選択が上手い人。 細かいチューニングやプレイで差を付ける人。環境外デッキの開発に熱を上げる人。 一番最後はともかく、全てのガチ勢が構築に秀でているかと言われれば、決してそんなことはない。

多様なタイプがいるのは、カジュアルデッカーについても同様である。 好きなカードと手持ちの資産でゆるく遊べればいいと考えている人もいれば、環境外デッキの構築に命を賭けている人もいる。 どんなカジュアルプレイヤーをイメージするかによって、判断は変わりうる。

そんなわけで、もし仮にガチ構築至上論を「あらゆるカジュアルデッカーの構築力はガチデッカーに劣る」という命題と解釈するなら、それが偽なのは明らかだ。

総括

ガチ構築至上論は、カジュアル構築においても基礎が重要だというメッセージである。 とはいえ、カジュアルデッキにも基礎が備わったものはあるし、カジュアルデッキからしか学べないことも多い。 極論、努力してやり込んだ分だけデッキ構築は上手くなる。 質の高いレシピをたくさん見て勉強するのが一番だ。

私見

「カジュアル専でも大丈夫」という論調の後で恐縮だが、自分はガチ環境もそれなりに見ている。 大雑把には以下の3つの理由がある。

  1. メタゲームに興味がある
  2. 環境デッキをハメ殺すための調査をする
  3. ガチデッキのギミックを避ける

環境チェックがカジュアルデッキ作りに必須とは思っていないが、自分にとっては間違いなく役に立っている。 ガチデッキの画像が流れてきたら、ざっと見ておいて損は無いだろう。 ガチデッキもまた、取り込むべき良質なレシピの一つである。

もう一つ宣言しておくと、自分は

同じコンセプトなら、ちゃんと回って勝てるに越したことはない

という信条を持っている。 アイデアが大きく損なわれない限り、カジュアルよりはランクマッチで回せた方がいいし、欲を言えば分かりやすい実績(高ランク昇格、TOP100入りなど)を持たせてやれる方がいい。 「カジュアルだから」という言い訳をすることもままあるが、完成度を追求するための上昇志向は忘れずにいたい。

実はここまで、カードゲーム一般に通用する話として書いてきた。 念のため自己紹介すると、私はDCG「デュエル・マスターズ プレイス」のカジュアルデッキを研究し、記事と動画を出している。 「本気でカジュアルデッキを作っている」というマイノリティ側からの意見であることは補足しておく。