はじめに
2020/9/15, 《無双竜機ボルバルザーク》がDP殿堂(1枚制限)になった。
こちらの記事を書いたのが9/14。 まるで2コマ漫画のようなオチである。
なぜナーフでなく制限なのかという残念さはあるが、 タッチボルバル構築が滅びることで構築に多様性が戻ってくるというのは大変喜ばしい。
……というのは落ち着いた今だから言えることで、唐突に制限が発表されたときには正直驚いた。 その理由は、自分が《ボルバルザーク》の規制を確信できていなかったからだ。 これはすなわち、私自身《ボルバルザーク》の強さを正しく判断できていなかったということである。
一方、開発班としても、せっかくリメイクまでして実装した《ボルバルザーク》を制限にするのは不本意だったに違いない。 開発側も、デュエプレ版《ボルバルザーク》がどれだけヤバいカードなのかを把握できていなかったということだ。
この記事では《ボルバルザーク》がなぜこんなことになってしまったのか、もっと突き詰めて言うと、なぜ《ボルバルザーク》の強さは正しく評価されなかったのかについて考えてみたい。
TCG版プレイヤーの見解
古参プレイヤーは、「紙版の方が強かった」と言う。
紙版《ボルバルザーク》には、追加ターンを得るための条件が一切無い。 強制敗北のデメリットがあっても、10ターン目以降にしか使えないデュエプレ《ボルバル》より強かったと。*1
紙版の現役プレイヤーは、「現代デュエマでは通用しない」と言う。
今の紙版のデュエマのキルターンは4~5ターン。 10ターンも待たなければならない《ボルバルザーク》は、環境が進めば使い物にならなくなるだろうと。
ボルバルマスターズ全盛期も現代デュエマも知らない私は、これらの声にすっかり騙されてしまった。 当たり前だが、我々が見るべきだったのは「今のデュエプレにおける」《ボルバルザーク》である。 本家《ボルバルザーク》という比較対象、そして現代デュエマという別の物差しが存在していたことが、 プレイヤーの注意を逸らしていた。
環境での立ち位置
ボルバルマスターズ全盛期には、トーナメントのほとんどのデッキがボルバルだったらしい。
対して、直近のデュエプレ5弾環境におけるボルバルデッキの割合はせいぜい半分くらい。 《ボルバルザーク》は確かに多いものの、環境を染め上げているとまでは言えない程度の使用率であった。
実際、青黒ボルバルは、白/青ブリザードやシータメイデンなど、高速かつリソースを取れるビートダウンデッキに明確な不利が付く。 5c天門は、中盤からシールドを焼却してくるデスフェニや、ハンデスを連打する青黒ボルバルに不利ということになっている*2。 《ボルバル》が強いのは間違いないが、ボルバルデッキに勝つだけならそんなに難しくなかった。
「対ボルバルはデッキ次第で十分倒せる。ゆえに、環境はボルバル一色にはなっていない。」
というのがガチプレイヤーの共通認識だった。そのため、《ボルバルザーク》が強すぎるのではないかと疑念を持つ者は少なかった。
ちなみに、DP殿堂発表時の公式の説明文は以下。
9月上旬のランクマッチにて対戦データを集計したところ、《無双竜機ボルバルザーク》を使用したデッキの使用率は41.9%(1位)となっておりました。 また、先日開催いたしました公式大会「BATTLE ARENA」におきまして、《無双竜機ボルバルザーク》を使用したデッキタイプは同様に高い使用率でした。
これを見るに、使用率4割ちょっとでも環境を乱していると判定されるらしい。
なお、《ダイヤモンド・ブリザード》ナーフ時の使用率は25.3%と今回の《ボルバル》よりさらに低かったが、あちらはデッキタイプが実質1つしかないのと、高い勝率(55.3%)が問題にされていたため、一概に比較はできない。
第一印象の薄さ
DMPP-03収録カード公開の時期、ガチプレイヤーの意識は初期版の《ダイヤモンド・ブリザード》をどうブチのめすかに向けられていた。 デュエプレ生放送で紹介された《ボルバルザーク》も、ガチ勢の目には客寄せパンダ程度にしか映っていなかっただろう。 初期版《ブリザード》と照らし合わせれば、「次の環境で10ターン目なんて来ない」と考えるのが自然だった。
実際、3弾環境初期はまさに《ブリザード》の天下で、ボルバルデッキはほとんど見かけなかった。 《ボルバル》が本格的に活躍し始めたのは《ブリザード》ナーフ後。
初動が遅く、第一印象が薄かったことから、プレイヤーの深層意識に「強カード」という認識が植え付けられなかったのかもしれない。
テストプレイ環境
開発側のテストプレイは、初期版《ブリザード》が存在する環境で行われていたものと思われる。 となると、3弾のカードパワーは、ブリザード環境下で丁度良いと判断されたことになる。
そこに後付けで《ブリザード》の効果を改変してしまえばどうなるか。 当然、環境バランスは開発が想定していなかったものとなり、またそこで調整されたカードもバランスが取れていないことになる。 《ボルバルザーク》はその一番の被害者だった、という可能性は高い。
テストプレイ時の環境と違う世界になってしまったのだから、仕方ないところもある。
開発への信頼
4弾くらいまで、メタゲームの環境は新弾が出るたびに移り変わり、しかもその多様性が保たれていた。 それゆえ、「デュエプレ運営はバランス調整だけは上手い」というのが通説だった。
このことから、《ボルバルザーク》に対しても「この調整が丁度良いに違いない」と信じるユーザーは多かっただろう。 「10ターン」というDCGならではの発動条件が新たに加わったことで、「きちんと調整されている感」が出ているのが余計にいけなかった。
ユーザーが開発を信頼しすぎていたのも一つの要因である。
3→4弾環境の動き
3弾から4弾にかけて環境がきちんと動いたことで、 ユーザーは《ボルバルザーク》のトップメタが崩れる日の到来を信じてしまったし、 開発班も《ボルバルザーク》のパワーをコントロール可能だと勘違いしてしまった節があると思う。
4弾から5弾にかけて環境が停滞したことで、初めて《ボルバルザーク》のカードパワーの問題が明るみに出たのではないか。 トドメに、公式大会ベスト8トーナメントにおける5c天門の暴挙。 これが公式に対応を迫るきっかけとなったのは間違いない。
まとめ
デュエプレ《ボルバル》の強さを評価しにくかったのには、以下の要因が考えられる。
- 紙版・現代デュエマとの比較
- 環境における絶妙な立ち位置
- 初期版《ダイヤモンド・ブリザード》の調整ミス
- 他カードによる環境遷移
おわりに
私はボルバルマスターズ全盛期を体験したわけではないし、デュエプレでボルバルデッキを愛用していたわけでもない。 それでも確実に言えるのが、デュエプレ《ボルバル》はあまり良くないカードだったということだ。 《ブリザード》のようなナーフではなく、1枚制限にしたという結果がそれをよく表していると思う。
サーチもロクにできないデュエプレで、《ボルバルザーク》はまだメタゲームでも使われるのだろうか。 《次元の霊峰》で《ボルバルザーク》を呼ぶデッキがどこまで定着するかに注目しているところである。