ミケガモのブログ

デュエプレの殿堂・ナーフ論

お題

ふわっとした内容の考察お題なんですけどもデュエプレでナーフカードが増えてきて、アガピトスやダイアモンドブリザードのようなナーフしても依然として強く戦えるカードに収まるナーフとゲオルグ、アメイング、烈流神のようなもう2度環境に表すことのないレベルまで弱くされる、その違いってなんでしょうか?

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殿堂・ナーフ論については前から書きたい題材だったので、 この機会に色々書こうと思って考えていたら1か月近く経ってしまった。 申し訳ない。

DP殿堂とナーフの差

デュエプレで強すぎたカードは、DP殿堂(1枚制限)かナーフ(弱体化)のどちらかの措置で規制される。 ナーフの程度の前に、まずはこの差について考えよう。

まずは早速、自分の考える「DP殿堂とナーフの差」について述べておきたい(個人の推論であることに注意)。

DP殿堂カードは、綿密に調整した上で実装したが上手くいかず、調整班が匙を投げたパターン。

ナーフのカードは、サクッと調整したら強すぎたので、一度弱体化させてみようというパターンである。

言い換えると、開発班がナーフのアイデアを出せるならナーフで、そうでなければDP殿堂になる。 細かい要素は他にもあるが、この根幹部分は今までの判例に対して概ね共通していると思う。

DP殿堂をさらに分類

現在のDP殿堂組は、「デュエプレSR組」と「それ以外の元殿堂カード」の2つに分けられる。

SR組については、どれも紙のヒーローカードであり、デュエプレパックの目玉SRでもある。 デュエプレ環境で絶対に活躍してもらうべく、考えに考えて強いカードに仕上げた結果、 強すぎて手に負えなくなってしまったのだろう。 こういうカードの場合、後から下手にナーフしたせいで、カードの特徴と威厳がなくなってしまうのは避けたい。 元カードの特徴とカッコ良さをリスペクトした結果、栄誉あるDP殿堂に落ち着くのだと思う。

一方、残りの元殿堂カードについては、 「紙から弱体化させたつもりなのにダメだった。これ以上弱くする案が無いので殿堂しかない」という流れだと思っている。 《ビジョン》は《シェイパー》、《エタガ》は自身の弱体化版。 開発班の目線では、これで無理ならどうすればいいんだ!となっているに違いない。

ナーフの程度について

一方のナーフ組はというと、弱体化の程度がピンキリである。 調整後も環境で活躍するカードがある一方で、見向きもされなくなるカードもある。

正直に言って、ナーフの程度に関しては自分も明確な答えを持っていない。 枚数が多い上、個々の事情があまりにも異なるからだ。

一応、今の時点で自分が納得していて、なおかつそれなりに説得力のある説明ができるものについては、↓のような意見である。

  • 環境バランス的に必要だった《ブリザード》、コラボカードにもなった《アガピトス》は、ナーフ後も活躍できるようにデザインされた。
  • 《汽車》《タッチ》は、軽量ランダムハンデスを追放するという明確な思想があった。
  • 《驚天》はゲーム性を著しく破壊した上、重要なカードでもなかったため、念を入れて大幅に弱体化された。

他のカードは、今の能力になった蓋然性を感じない。 個人的には、《クワガタ》《レモン》は妥当で、《ゲオルグ》や《烈流神》は弱くなりすぎ。 そして、どれも環境では見かけない。 ただし、ナーフ後の使用者があまりにも少ないため、 カジュアルレベルであればほどほどに強くて良調整だという可能性も否定できまい。

公式の判断基準

ここからは、公式発表文から運営の規制に関する思想を紐解いていこう。

規制理由にたびたび登場する文言として挙げられるのは、

  • 全てのランクにおいて健全なゲームバランスが確保される
  • ランクマッチの「多様性」「流動性

の2点。 これらはすなわち、運営が対戦環境およびカードプールに普遍的に求めている条件ということになる。

公式による分析

公式説明文における、勝率や使用率の記述もまとめておこう。

  • 特:特定のランク帯において
  • 先:先攻での
  • / : ND / ADでの値。公式で記載が無いもの、自明なものは省略
  • ↑:以上

「上回る日も」といった表現の反映は省略した。

カード 勝率 使用率 先読み
リザード 55.3, 特65↑ 25.3
ボルバル 41.9, 大会でも高
汽車タッチ
ビジョン 54.1 (5.7) / 11.9
クワガタ 52.8, 特先60↑/ - 24.5 / -
レモン*1 19.7 / 18.2
テクノロジー
アガピトス 50.3 38.8
オルグ 50.3 21.6
驚天 57.3
先60↑
11.9
アポロヌス 54.8 / 55.0
先58.8(特60↑)/先58.8
12.9 / 11.9
エタガ 49.3 / 47.9 31.2 / 27.2
烈流神 特先60↑ 高い
竜極神 高い 40↑, 特45↑
ゼロフェニ 想定より長期間高い
レオパルド 先60↑ 10-15
モノノフ 特先60↑ 高い
ブレイブ 52/- 20/-
薔薇
ツヴァイ 55.7, 特60↑ 11.1
カスケード -/56.3, 特60 -/ 20.9, 特24
ヴィルジニア -/55.1 -/15.0
キリコ 51.6/- 12.2/-

これを念頭に置いたうえで、直接的な規制理由と基準を確認したい。

勝率

勝率は55%, 先攻勝率は60%超えがアウトのラインだと言える。

実は、「特定のランク帯では」という条件が付くのは勝率についてのみである。 普遍要素として挙げた「"全ランク帯で"健全なゲームバランス」というのは、主に勝率について言及したものだということになる。

使用率

  • 汎用カードの使用率は40%付近でアウト:《ボルバル》《アガピトス》《竜極神》など
  • 特定のデッキタイプの使用率は20%付近でアウト:《ブリザード》《ブレイブ》など

だと言える。

環境先読み調整

現状の勝率・使用率に大きな問題がない場合にも、 「今回の能力変更による影響と、今後登場予定のカードを考慮して」という理由で規制が入ることがある。

他カードの調整がもたらす環境への短期的な影響、およびカードプールにおける長期的な影響を考慮した、いわゆる「環境を先読みした調整」である。 特に後者は、強すぎるもしくは不健全なカードがプールに残ることで、今後の開発の障害になると判断された場合に適用される。


ほかにも、カードによっては固有の事情で規制を食らったものもある。 そちらは個別カードの方で補足したい。

個別カード

ここからはさらに詳しく……というか、 各カードに対して自分が思っていることをコメントする。

《ダイヤモンド・ブリザード

3弾収録、その2週間後に弱体化。 デュエプレ最初にして未だに最速のバランス調整である。 勝率も使用率も当然のようにアウト。カードパワーが異次元すぎたから仕方ない。

元が狂っているので、弱体化しても全然強い。 《ボルバルザーク》一強環境を防ぎたかったことのほかに、 ビジュアルの良いスノーフェアリーを環境に残したいという事情もあったかも。

ちなみに、墓地回収が消えたことで元カードの特徴が半分失われた。 元はVRのマイナー寄りカードだったので、プレイヤーの印象に残りすぎたプレ版の特徴が尊重されたか。

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無双竜機ボルバルザーク

3弾収録、5弾中盤にDP殿堂。 3弾時点では「耐える」デッキが弱かったが、【天門】が登場した4弾からはその脅威を遺憾なく発揮し始めた。

登場から2年以上がたった今も、デュエプレ史上最強カードと言って良いのではないか。 勝率のデータが無いのは、《ボルバル》が多すぎてかえって勝率が50%に収束したからだと思っている。

当時のデュエプレ界隈は、ナーフ派・殿堂派・規制不要派の3つに分かれ、混沌を極めていた!

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《汽車男》《ゴースト・タッチ》

1弾環境から存在、5弾中盤にナーフ。

原因が強さではなく「閉塞感」のみなのが珍しい。 【青黒ボルバル】がきっかけで消えたことになっているが、 本音は1弾から続くランダムハンデスへのヘイトに終止符を打ちたかったということだろう。 紙ではこの2枚が可愛く見えるほどの血も涙もないコントロール合戦があったので、 調整班にも「この2枚すら規制しないとアカンのか……」的な葛藤があったのは想像に難くない。 規制に踏み切ったのは英断だったと思うが、 もっと早くにやっておけばユーザー減少に歯止めがかかったかもしれないと思うと悔やみきれない。

以降ランダムハンデスは長らく封印されていたが、16弾でついに《特攻人形ジェニー》が登場し沈黙が破られた。

《ストリーミング・ビジョン》

1弾収録、8弾中盤にDP殿堂。 1弾の頃も【青単】で使われた実績があったが、単体のカードパワーはそれこそ1弾相応である。 問題になったのはひとえに【ツヴァイ】のせいだ。

規制時の説明文では、

  • ほぼ水文明で構成したデッキのうち*2
  • 《クリスタル・ツヴァイランサー》を使用し
  • 《インビンシブル・テクノロジー》を使用していない

という、とんでもなく回りくどい説明を受けた。殿堂根拠は、

  • AD【ツヴァイ】の使用率はNDの倍以上
  • ADでの勝率54.1%で、アウトに片足突っ込んでいる

ということ。

実は、説明文にはNDの【ツヴァイ】の勝率が示されていない。 NDとADで勝率はさほど違わず、それが殿堂根拠を示す際に合理性を欠くため、あえて表記されなかった可能性がある。 なんとか《ツヴァイ》本体を生き残らせたい魂胆が透けて見えるというものだ。 その《ツヴァイ》も後にメスが入るのだが。

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《ジェネラル・クワガタン》

8弾収録、8弾中盤にナーフ。 8弾前半の【トリーヴァパンダ】を最強たらしめていた理由。 リリースされてから次の弾が出る前に規制を食らったのは、《ブリザード》の他にコイツと《レモン》だけである。 種族:コロニー・ビートルとかだったら許された可能性が微レ存。

全盛期の【トリーヴァパンダ】が強かったのは、《クワガタン》のほかに《アガピトス》までいたからである。 仮にナーフ前《アガピトス》を【パンダ】が手にしていなかったら、コイツはどうなっていたのだろうか。

《剛勇王機フルメタル・レモン》

8弾リリース、8弾中盤にナーフ。 これでも収録時はネタ扱いされていた。

状況分析に「《アガピトス》とセットで採用されていることが多く~」とあるにも関わらず、 こちらだけに規制がかかった。所謂とばっちりである。 ただし、《アガピトス》がいなくても普通に強かった説は割とある。

紙の能力に戻っただけなので、調整内容に文句は言えまい。

《インビンシブル・テクノロジー

6弾収録。 7弾環境中期にコスト1減の上方修正を受けてから環境に姿を見せ始め、 《キング・レムリア》などの露骨な強化までもらった挙げ句、9弾環境前半にDP殿堂。

決してヒロイックとは言えないが、 カードデザインの派手さと背景ストーリー上の存在感があるため、紙版でもプレイヤーの印象に残るカードである。 そこからわざわざSRに抜擢、効果も大幅変更、さらに上方修正まで貰うというテコ入れっぷりを見るに、かなり張り切って実装されたものと察する。

同時施行の諸調整に伴う短期的な環境変化、長期的なカードプールの推移という、2つの観点から制裁が下された。 タイムリミット系のデッキには、この時点でも【黒緑ドルバロム】が存在していた。 《テクノロジー》だけ沈められたことにはやはり意味があるのだろう。

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《連珠の精霊アガピトス》

8弾収録、9弾前半に弱体化。 関連パーツの規制の後から自身も弱くなる、「本体がダメだった」シリーズその1。

出た当初はそこそこの評価だったが、その実態はとんでもない凶悪クリーチャーだった。 8弾環境前半は2強だった【ゲオルグ天門】【トリーヴァパンダ】の両方に入り込み、 《レモン》弱体化後も「白が入る理由」としてデッキ基盤になり続けた。

元が強すぎただけで、弱体化後も《ヘブンズ》から出てきうる6マナ3打点という特長は失われていない。 弱体化後も【ラッカマルコ】のパーツとして活躍した。

調整後もそこそこ強い事に対し、「WIXOSSコラボがあったゆえにナーフを手加減されたのだ」とする意見も見られた。 しかしながら、発表当初は「コスト2以下はさすがに終わったか?」という見方が優勢だったように思える。 真相は闇の中である。

《驚天の超人》

8弾EX収録、9弾前半に弱体化。 コイツを軸にした【驚天ビート】は、8弾EX後期~9弾初期のゲーム性を完全にぶち壊した。 コストが倍になるという見るも無惨な調整も、その罪を問われたと考えれば残当

説明文には「使用率、勝率ともに""本来の""想定を上回っており」という、他には見られない表現がある。 リリース時点では影響力が極端に過小評価されていたことが見て取れる。

もう1枚の主犯格《運命の選択》は、素知らぬ顔で【ガントラビート】を支え続けた。

《超鎧亜キングダム・ゲオルグ

8弾収録、9弾前半に弱体化。 見れば皆頷く強カードが、ナーフで腑抜けになってしまった。

【ゲオルグ天門】のキーカードのように見えるが、コイツも汎用性がかなり高い。 【ゲオルグスターマン】【ドロマーザマル】【ドロマーテクノロジー】など、数々のデッキを環境まで引っ張り上げた実績がある。 特に《ウルコス》《カチュア》《ゲオルグ》《サファイア》での全焼却5キルは凶器にして狂気。

《超神星アポロヌス・ドラゲリオン》

7弾収録、9弾EXリリース時にDP殿堂。 【アポロヌス】は《アガピトス》《ゲオルグ》の盤面処理能力によって抑制されてきたデッキタイプだった。 その2枚が弱化したのを良しとばかりに、9弾環境後半を暴れ散らかした。

勝率、使用率、今後のカード開発と、あらゆる判断基準に引っかかった絶望的カード。 規制と同時に実装の《ボルフェウス》を引き立てるために退場させられた、という背景もあったりする。 《ボルフェウス》に限らず、《ソルフェニ》《ヴァルキリアス》《ビッグバン》など、 程度の差はあれ「《アポロ》でよくね?」だったカードは枚挙に暇がない。

規制後も《ヘリオライズ》で実質5積み出来ているようなものだし、 バーターとして収録された《センチネル》自体も普通に強い。 11弾環境の公式大会でも、【アポロリペア】は優勝に輝いた。 やっぱダメだこのカード。

※ 公式レターは現在消えているので、レビュー動画を載せておく。

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《魂と記憶の盾》

5弾収録、10弾リリース時にDP殿堂。 このカードが辿った道のりは結構複雑なので、別記事の解説を読んでほしい。

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使用率は約3割。 実は《ボルバル》《アガピ》《ゲキメツ》の40%ラインには届いていないのだが、 特定デッキへの採用率・枚数が極端に多いことも考慮して殿堂入りさせたと解説されている。 これは調整班が《エタガ》に縛られた環境となることを危惧したということ。 「流動性」を重視した措置なのだろう。

一方、このカードには「閉塞感」要素もあるといえばある。 10弾で《ロマノフ》《紫電》らの非進化切り札が出る前に、急いで《エタガ》を規制したかったという説もありそうだ。 DP殿堂の理由に「限られた時間では手の打ちようがないから」もあると睨んでいるので*3、 今後こういうパターンのカードが出てくるかどうかに注目している。

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《烈流神》

8弾EX収録、10弾環境中期にナーフ。 【ガントラ】【パンダ】【ラッカマルコ】など、あらゆるビートダウンの強すぎるサブアタッカーだった。 唯一の対抗手段《エタガ》が消えたら《烈流神》が暴れることなど、誰にでも予想がつく。 ただし、コイツのせいだけで先攻勝率60%以上にまでなっていたかと聞かれると、そこまでか?という気がする。

ナーフは《ウンギョウ》のコスト増、さらにアンブロッカブル削除のダブルパンチ。 流石に厳しすぎたようで、ランクマはおろかカジュアルマッチでもほとんど使われなくなった。 どちらかだけ消すのでも良かったように思うが……。

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《竜極神》

8弾収録、10弾EXリリースと同時にDP殿堂。 8弾三馬鹿SR*4のうち、最後の生き残りだった神。

《エタガ》殿堂以降はターボ《ゲキメツ》へのまともな対抗札がなかったため、誰にも手がつけられなくなっていた。 《烈流神》亡き後はビートダウンが弱体化し、いっそう立ち位置が良くなった。 10弾環境で花開いた【武者】のサブプランとして、最後まで華々しく活躍した。

規制理由は主に使用率、ついでに勝率とのこと。 長らく環境に影響を与えてきたにしては、説明文はあっけないほど簡素である。 余裕が無かったのか、はたまた必要最低限で要件を済ます方針に転換したのか。

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《暗黒凰ゼロ・フェニックス》

9弾EX収録、11弾リリース時にナーフ。

初期からあれだけランデスに慎重だった開発班が、《ショック・ハリケーン》を実装して【自壊ゼロフェニ】を推奨してきたのは衝撃的だった。 それでいて、「(害悪として)想定より長い期間一定の使用率を維持している」のを理由に規制するという自己矛盾。 規制をかけるのも遅すぎである。 新規ユーザーの流入が見込めるにじさんじコラボ(10弾環境中期)の際にもコイツを野放しにしていたのは意味不明だ。

世間的には、「自壊型は倫理的にダメだが、コントロール型は無調整でも良い」という論調が優勢だった。 個人的には、効果発動を相手ターン中だけにすればよかったと思っている。 《ゼロフェニ》はシールド焼却できるので、トリガーで自ターン中に倒されることはない。

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《統率するレオパルド・ホーン》

6弾収録、12弾環境中期にナーフ。 史上初、AD環境のみのバランス調整を目的とした施行である。

ADの《レオパルド》入り【黒緑速攻】は、9-10弾環境の時点でもほぼ一強状態だった。 目立った欠点と言えば色の都合上SAが無いことくらいだったが、11弾の《ハックル・キリンソーヤ》でそれを克服、 12弾の《ワーム・ゴワルスキー》や13弾収録予定の《デスマーチ》がそれに追い討ちをかけたことで、これ以上無視できない存在となったか。

先攻勝率6割とされているものの、実はこのデッキは後攻でも出力がほぼ落ちないので、総合勝率も高かったと思われる。 使用率も10-15%と低めに見えるが、多様性が特徴のADにおいて同じデッキタイプがこれだけ使われているのは異常だった。

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《モノノフ・ルピア》《ブレイブ・ルピア》

《モノノフ》は9弾収録、《ブレイブ》は12弾収録。どちらも13弾リリース時にナーフ。 それぞれ【剣誠】【NEX】の「強すぎるお供の鳥さん」として、両デッキを環境トップに導いていた。 これらは12弾を超高速環境に仕立て上げていたデッキでもある。 13弾で導入されたサイキックたちが活躍できるよう、この規制によって全体的にゲームスピードを落としたかったのだろうか。

サーチがトップ固定に、強かったおまけ効果も超マイルドになったため、彼ら自身はほぼ再起不能である。 その一方、《剣誠》は他のサムライたちで、《NEX》は《ボルシャック・ルピア》でリペア可能である。 テーマデッキ用のオリカとして生まれてきて活躍したのは良いものの、最終的にこのような扱いになってしまったのはちょっと可哀想。

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《薔薇の使者》

12弾収録、13弾リリース時にナーフ。

規制理由は環境先読みの一点だけ。 【NEX】【剣誠】が暴れる高速環境で【キリコ】が生き残るための必要悪だったが、その必要性がなくなったことでサクッとナーフされた。

5マナ時代は5t《キリコ》の安定化に一役買っていたが、6マナにされてからは滅多に見なくなってしまった。 ちなみに5t《キリコ》自体は《薔薇》なしでもそれなりの確率で決まる。

《クリスタル・ツヴァイランサー》

6弾収録、14弾中盤にナーフ。 本体がダメだったシリーズその2。 《レオパルド》に続いて2枚目の、ADのみに影響する規制である。

元々狂ったスペックだったが、説明文にもあるように14弾で《アクア・メルゲ》《アクア・ジェスタールーペ》の2枚を獲得したことで臨界点を突破した。 むしろ《ツヴァイランサー》を満場一致で退場させるためにこの2枚を収録したのではないかという見方すらある。 ちなみに「リキピ5体」に弱体化されてなおランクマで戦えるらしい。

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《ダイヤモンド・カスケード》

15弾収録、16弾中盤にナーフ。 規制理由はADで、NDはその巻き添えを食らった形である。

《ブリザード》《カスケード》は、それぞれ単体だけでスノーフェアリーを環境トップに導くだけの狂ったカードパワーを持っている。 その2枚がシナジーも相性補完も完璧にこなしていたので、もうどうしようもなかった。

説明文によれば16弾で《ジャスミン》を得たのが規制のきっかけだそうだが、15弾時点でもAD環境は完全に【スノーフェアリー】に歪められていた。 本来なら《ツヴァイランサー》同様、15弾のうちに調整が入って然るべきだった。 16弾半ばまで放置されていたのは、もはや開発班の興味本位で《ジャスミン》入りの型を世に出したかったからではないかと疑ってしまう。

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《魔光蟲ヴィルジニア卿》

11弾収録、16弾中盤にDP殿堂。 紙では《B・ロマノフ》を吊り上げた罪により殿堂入りしたが、 プレでは《Bロマ》自体のコスト減、《カラフル・ダンス》の使い勝手悪化、 《進化設計図》によるリソースを武器にした型の登場などの背景があって、規制を免れていた。 そして今回、デュエプレオリカ《MRC》を吊り上げた罪で別件逮捕となった。 歩んだ歴史こそ紙と違うものの、結局殿堂入りしたことには苦笑いを隠せない。

説明文は主にADでの実情を述べ、特に【スノーフェアリー】の弱体化でさらに【MRC】の勝率が上がる見込みだとしている。 しかし15-16弾環境に理解があれば、この記述は相応しくないことが分かる。

ADで【MRC】の勝率が高い理由はその出力もさることながら、天下の【スノーフェアリー】に勝てるからである。 小型ブロッカーによる耐久とトリガーのカウンター性能、《ディアス》《崩壊と灼熱の牙》《ギガボルバ》《死海竜》などの封殺性能が【スノーフェアリー】に有効なこと。 そして【スノーフェアリー】の影響力により、【MRC】の天敵である《お清め》《N》などが入り込む余地すらないほど環境が歪んでいたことが、【MRC】跋扈の要因である。 他方のND環境では【スノーフェアリー】のような一強はおらず、《お清め》《N》といったメタカードを組み込むことのできるデッキタイプが多いため、 【MRC】の勝率・使用率はある程度抑え込まれている。 この情勢に鑑みれば、ADで【スノーフェアリー】が弱体化した場合、ADはNDのように多様性を持ち始め、その結果【MRC】の使用率は下がるはずである。 残念ながら、公式の説明文は的を外していると言わざるをえない。

それはそうとして、【MRC】単体は対策必須の激強デッキだったため、何らかの方法で弱体化することには大賛成。 紙のデュエプレコラボデッキに収録されようというタイミングで下方修正を食らっているのは滑稽だが。

《エンペラー・キリコ》

12弾収録、16弾中盤にDP殿堂。 本体がダメだったシリーズその3。 コスト増やしてターン1制限をつければ大丈夫!などということもなく、無事殿堂入りと相成った。

奇しくも《薔薇の使者》同様、規制理由は「環境先読み調整」である。 《キリコ》は踏み倒し先の制限がないので、16弾環境で言えば《N》《エクス》《リュウセイ》のような新戦力が、今後も容易に取り込まれるだろう。

実は新規DP殿堂は《竜極神》以来1年ぶり。 デュエプレの調整はナーフが多数派だが、《ヴィルジニア》と《キリコ》が同時に殿堂に指定されたのは、 やはり紙に引きずられているからだろうか。

まとめ

  • ナーフ案が思いつけばナーフ、手のつけようがなければDP殿堂。
  • DP殿堂組は、SR組と元殿堂組に分けられる。
  • ナーフの程度は、理由付けしやすいカードとそうでないものがある。
  • 調整の根幹理念は、全ランクでのデッキバランスと、多様性・流動性の確保。
  • 勝率は55%, 先攻勝率は60%, 使用率はカードが40%・デッキが20%でアウト。
  • カード開発への影響や「閉塞感」などの理由もある。

おわりに

国内大手DCGだと、シャドウバースは原則効果調整のみ、デュエルリンクスは原則制限のみ。 ナーフも制限もあるデュエプレは、良く言えば柔軟性があり、悪く言えばどっちつかずである。 この形式を取る以上、制限改定はユーザーが最も納得のいくものを施行するように頑張ってほしい。

それはそうと、DCGユーザーは「公式文」をネタにするのが好きな種族である。例としては、

  • シャドウバース
    • 「過剰なストレス」
    • 「相手が敗北します」
  • デュエルリンクス
    • 「いつでもデュエルを終わらせる強さ」
    • 「この一枚で勝利を確信できる程に有利な状況を作り出せる」
  • デュエプレ
    • 「閉塞感」
    • 「挙動が直感的でない」
    • 「把握していてもうっかりやってしまう場合があり」

などなど。そういう意味でも、今後のゲームバランス調整が楽しみである。

*1:オルグ天門

*2:タッチ《スパーク》の存在を示唆している

*3:特にこの時期はEXパックのせいで開発スケジュールがタイトだった

*4:《アガピ》《ゲオルグ》《ゲキメツ》。これが全部入ってたのが【ゲオルグ天門】