はじめに
デュエプレでは、8, 9, 10弾にわたって「エクストラパック」が実装された。 「DMPP-08EX」のようなナンバリングでリリースされるエクストラパックは、収録枚数が通常パックよりもやや少ないながらも、新たなデッキテーマを輩出したり、通常パックのデッキテーマを強化したりと、環境に少なからず影響を与えてきた。
ところが、11弾からはエクストラパックが廃止され、2ヶ月に1回のパックリリースに戻った。
一体エクストラパックとはなんだったのかを、プレイヤー目線で整理してみたい。
エクストラパックについて
エクストラパック(以下適宜「EX弾」)について、もう少し詳しく書いておく。
EX弾は、通常弾が出た2ヶ月後に実装される。 EX弾が存在するときの通常弾は3ヶ月周期でリリースされていたので、 「通常弾環境2ヶ月、EX弾環境1ヶ月」というサイクルが繰り返される。
収録カードは全50種(通常弾は85種)。 通常弾と概ね同時期のカードが主に入っているが、 再録カードやかなり古いカードも拾ってくるのも特徴である。
SRは5種で、うち2種にシークレットカードが存在する。 EX弾シークレットには、キャラスキンorアバターパーツ、専用BGMが特典としてついてくる。 また、通常弾のシークレットは召喚時に特殊なアニメーションが挟まるのが特徴だが、 EX弾のシークレットはそのアニメーションが無い。
ちなみに、先行DCGのシャドウバースにも「アディショナルパック」という似たようなシステムがある。 こちらは、3ヶ月ごとに出る通常弾に対して、約2ヶ月経ったところで20枚前後のカードを追加するというもの。 新しく独立したパックが出るデュエプレと違って、既存パックの収録ラインナップに新カードが足される形式である。
偶然かどうかわからないが、アディショナルパックの初出もシャドバ8弾のときかららしい。
DMPP-08EX「覇竜咆哮 -TRIBAL EXTREME-」
表面上は、ティラノ・ドレイク、アーク・セラフィム、グランド・デビル推しの弾。 強化というよりむしろ、8弾の時点ではまともに組めなかったこの3種族がようやく形になったというのが正確。 ただ、これらが強かったかと言うと正直微妙で(特にティラノ・ドレイク)、 環境があまり変わらなかったと評されることが多い。
その一方で、
- 強力かつ異端な効果で環境を歪めまくって弱体化された《驚天の超人》
- あらゆるビートダウンで活躍し続けてやはり弱体化を受けた《烈流神》
- 【テクノロジー】を流布させて殿堂デッキへ追い込んだ《キング・レムリア》
といったカードは確実に環境を変えている。メインテーマでないカードに刺客が紛れていたパターンである。
DMPP-09EX「聖竜凱旋 -REBORN OF THE SURVIVOR-」
- 【サバイバー】
- 【ボルフェウス】
- 【ゼロフェニ】
の3デッキがテーマの弾。 サバイバーが21種も収録されていることから始まり、 50種のうち大半がこれらに関係するカードで埋まっている。 残った収録枠には裏テーマとして、《ラスト・バイオレンス》《デリンダー》《オボロカゲロウ》などの5色デッキ用カードが入っている。
8弾EXと違って、これらはいずれも適切なデッキパワーで環境に入ってきた。 後に【自壊ゼロフェニ】は「そこそこ強い超害悪デッキ」として暴れ回って規制を食らうが、それはまた別の話である。
DMPP-10EX「魔帝剣征 -BATTLE OF GLORY-」
- 《ボルメテウス・剣誠・ドラゴン》
- 《魔光大帝ネロ・グリフィス》
の2枚を筆頭に、10弾のテーマだったサムライとナイトを大幅に強化した弾。
《ネロ・グリフィス》がアッパー調整されたことや、この2枚はスーパーデッキ2022(構築済みデッキ)の切り札にも抜擢されていることからわかるように、開発班がこの2枚に懸けた思いは相当なものである。
特に《グローリー・ゲート》《バレット・バイス》《ブラッディ・シャドウ》は、現行の【ナイト】を支える超重要パーツ。【ナイト】はこの弾でようやく環境に進出できたと言える。
それ以外だと、
- 人気投票の返礼品:《ZAGAAN》
- 《ドルゲユキムラ》への布石:《シンラ》《西南》
- 優良呪文:《ピクシー・コクーン》《ベンケイ・バーニング》
など、地味に良カードの多いパックである。
EX弾の実態を確認したところで、ここからはEX弾の良い点・悪い点を挙げていこう。
良い点
新弾のワクワク感
カードゲーマーとして、新カード追加はやはり楽しみである。
2ヶ月に1回だった新カード情報が、EX弾のおかげで3ヶ月に2回になった。 プレイヤーが盛り上がるシーンもその分増えた。
収録ペースに関しても、
- 従来 85種/2ヶ月
- EXあり 85+50種/3ヶ月
なので、EXありのほうが期間あたりのカード追加量は多い。
新弾はパック購入を促す機会でもあるので、売上への貢献も大きかったと思う。
古いカードの救済
通常弾で拾われなかった古いカードも、EX弾で救ってもらえる可能性がある。
収録枠が余りがちなので潜り込みやすいというのと、 お祭り的なパックゆえ収録しても違和感が出にくいという2つの理由があるだろう。
ヒロイックなテーマではない上、大量の収録枠が必要なサバイバーが実装できたのは、 間違いなくEX弾のおかげだ。 《コーライル》《ファントム・ベール》《ガッツンダー》など、出るタイミングを逃していた古いカードがしれっと混ざるのもEX弾の楽しみの一つだった。
コアファンにとっては嬉しい機会だったと言える。
NDカードプールの拡張
NewDivisionの使用可能範囲である「直近6弾分」のカウントについては、EX弾は通常弾とセットで1弾分になる。 したがって、今は通常弾6つ分に、EX弾3つ分がおまけで加わっている状態である。
運営側の匙加減だと思うが、今のところはEX弾のおかげでカードプールが広がっていると考えることができる。
もっとも自分はAD信者なので、拡張状態の今のNDでも不満なのだが。
シークレットSR特典
EX弾実装と足並みを揃えて、豪華なシークレットSR特典を用意したのは良い試みだと思った。 特に、デュエプレオリジナルキャラの五守護のキャラクタースキン実装には喜んでいる人が多かった。
スキン付きのシークレットSRについては、11, 12弾にも受け継がれている。
悪い点
開発コストがかかる
新弾が出る頻度が増えることで、開発側の負担はとても大きくなる。
それが如実に表れているのが、EX弾が始まって以降のバグの多さ。
- 《ドルザバード》が色んな組み合わせでおかしくなる
- 《シータ・トゥレイト》に能力が乗らない
- 《ボルフェウス》が《スペル・デル・フィン》を貫通して呪文を唱えてくる
- 《ピクシー・コクーン》の回収が任意になっている
など、初歩的な不具合が散見されたのは記憶に新しい。
世代が進むごとに複雑な効果のカードは増えていくので、 余裕を持った開発環境を整えてほしいと思う。
また個人的には、新弾の告知体制(新カード紹介など)についても、 リリースのペースに対して間に合っていないような印象を受けた。 DMPP-08EXのリリースが発表された際、タイトルロゴが決まっていなかったのがその典型だ。
販売方式への不満
良い点のところでシークレットSR特典について触れたが、販売方式が不親切なせいでその入手が極めて難しくなっているのはよろしくない。
EX弾は、収録種類が通常の約6割、次弾が出るまでの時間は通常の半分しかない。 規模の小さい弾なので、パックを開ける回数は通常弾よりも少なくなる。
にもかかわらず、天井は通常弾と同じ300パック。 欲しいカードが無い状態で、天井のためだけにパックを開けることを強いられる。
それでいて、SRチケット付1パックセットの購入制限は、通常弾が3個までのところ、EX弾はたったの1個となっている。 収録種類を考えるとせめて2個買えてもいいと思うのだが、とにかくユーザー側の課金意欲を徹底して削いでくる。
また、シークレットSRの排出率は各種0.03%。 確率としては通常弾と同じ……と言いたいのだが、見方を変えるとそうとも言えない。
通常弾SRの排出率は、各種0.15%。そのうちシークレットが0.03%なので、通常SRに対するシークレットの割合は1/5である。 他方、SRが5種しか無いEX弾では、SR排出率が各0.3%。通常に対するシークレットの割合は、1/10になる。 相対的に見ると、EX弾のシークレットは入手確率が低いのだ。
せっかく魅力的な特典がついているのに、これではユーザーの手も伸びないというものだ。
ちなみに、シークレットSRをパックから素引きしようと思うと、期待値換算で約670パック開封しないといけない。 かなり運が良くないと、天井せずに入手するのは不可能である。
専用BGMの扱い
関連して、専用BGMについて。
デュエプレのBGMは有名コンポーザーに外注していて、非常にクオリティが高いことで評判だ。
ところが、シークレットSRの入手が難しいために、特典のBGMもやはり手に入りにくい。
珍しいカード本体や、おそらく内製であろうキャラスキンについてはまだいい。 しかし、外注の素晴らしいBGMがさっぱり手に入らないというのは、 せっかく作ってくれたアーティストに失礼……とまではいかないにしても、それはそれは勿体ない話である。
特典以外にも有償(500~1000ジェムくらい?)で買えるようにし、 さらにデュエプレのサウンドトラックも販売して、 それらの売上をアーティストに還元するほうが皆ハッピーなのではないか。
どちらとも言えない点
カードプールの移り変わりが速い
EX弾環境は1ヶ月分しかない。 環境が研究され尽くしたかがわからぬまま、次の通常弾が出る。
常に新しい刺激があって楽しめるという人もいれば、 もっとじっくり遊びたいという人もいる。 ここの感じ方は人それぞれだろう。
なお、ゲームバランス自体は割と良かったと認識している。 EX弾のある時代にゲームバランスが大きく崩れたのは《驚天の超人》くらいで、 ほかは概ね平常運転だった。
通常弾を補完するEX弾
今までのデュエプレのテーマデッキは、 基本的に1つのパックを買い漁ることで構築できるものが多かった。 これに対して【アーク・セラフィム】や【ナイト】は、通常弾とEX弾を合わせて初めて完成するデッキだった。
EX弾でテーマ強化が来るのが楽しみになるというプラスの側面がある一方、 様子見感が拭えない、あえて小分けにするのは未完成商法だというふうに、マイナスに捉える意見もある。
EX弾ありきのカード開発には、良い面も悪い面もある。
まとめ
EX弾によって新カードがたくさん出るようになったことや、 シークレットSR特典の試みは評価できる。
しかし、それに開発が追いついていないように見えた点、 パックの販売形式が洗練されていなかった点は残念だ。
EX弾でカードが出てくること自体をどう感じるかも合わせて、 各プレイヤーの受け取り方が決まると思う。
おわりに
EX弾が出ていた時代の記憶が薄れないうちに書いた。
自分としては、EX弾の開発体制は危なっかしくてならなかったので、 話を畳んでくれて正直ほっとしている。
それはそれとして、BGMやスキンは単品販売してほしいと常々思っている。 現状では、1~5弾のシークレットSRや過去コラボのBGMの入手手段も無い。 デュエプレ運営は持っている資産をもっと有効活用してほしい。