2017年秋にSteamでリリースされ、2018年には非公式日本語化パッチも制作された話題作『Doki Doki Literature Club』(通称DDLC、ドキドキ文芸部など)をプレイしてみた。
なんとなーくゲーム内容を察する程度に前知識を持ってプレイ。せっかくなので英語版に挑戦しようとも思ったが、今回は日本語パッチに甘んじた。翻訳のクオリティーは予想以上に高く、プレイにもしっかり没入できた。有志の皆様に感謝申し上げます。
プレイは速めのクリックで1周目が2.5h, 満足のいく周回数をこなし終わるまでに4hちょっと。ストーリーも絵も素晴らしく、何より無料で遊べるのが信じられない。Steamの環境があるなら是非ともプレイすることをおすすめする。こんな辺鄙なブログを釣り上げるような人には無駄かもしれないが、前情報はできるだけ少ない方が良いだろう。
ちなみに執筆者は生々しいグロは無理だがちょっとしたドッキリは好物、というへんてこな感性を持っている。まどかマギカ、ダンガンロンパあたりがいけるなら多分大丈夫。
初めに断っておくが、本記事はゲーム全体を通したメッセージ、およびキャラやストーリーの熱い考察ではなく、
- ゲームの各所を仕様の面から捉えて
- ネタバレとは言いつつも直接的な表現を避け、想像を掻き立てる
ようなレビューをしていく。
以下、ネタバレ防止のためしばらく空行
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DDLC wiki
日本語版
Doki Doki Literature Club! 攻略 Wiki*
英語版
DDLC Wiki
wikiに則り、"act"は章を、"周"はプレイ回数を指す単位として区別して書く。
ルートの仕組み
「好感度」の概念は(ほぼ)無い。"詩の作成"や選択肢による一時的な分岐こそあれど、それが累積して特定ルートに固定されるというようなことは起こらない。
分岐の違いは、CG・会話内容変化のみ。最終的にどのキャラにスポットが当たるかは完全に固定なので、広義には一本道のシナリオと言えるだろう。
act1、サヨリは受け入れた時のみ短い分岐が発生しCGをGETできる。act2、ユリは受け入れてもそうでなくとも展開は同じ。
自分は初見プレイのact1ではサヨリ推し、act2ではユリ推しで進行していたので展開との因果関係が全くつかめず、「救いは無いんですか?!」とばかりに2周目を力んでプレイした。「救いは無いね!」。
プレイ中にファイルが生成される
本作はゲームの進行中、特定の箇所で”ゲームの進行に関係ない"ファイルの生成・削除が行われる。
act1でsayoriをdeleteして起動すると専用の演出に入る。他3人は変わらず。act2はsayoriをrecoverしたり、他3人をdeleteしたりしても特に相違が無かった。自分が試したのはここまで。
セーブデータやファイル生成についてはこれだけに留まらず、非常にいろいろなパターンが存在する模様。自力では絶対に気付けないほどのマニアックさだし、wikiで確認したことで満足した。
ファイル管理についてはact3でプレイヤーは否が応でも注目することになる。これは、製作者が遊び心でやっているゲーム中の余分なファイル生成に気付いてもらうための誘導になっている。隠し要素の可能性をさり気なく示唆するこのやり方には非常に関心させられた。辿り着けるのは勘が良くかつ相当熱心なプレイヤーに限られるだろうが。
まあ余分なファイルに関してはおまけ的要素なので良いのだが、act3→act4に必須となる「作業」、パソコンに疎い人は何をしたらいいのか分からないのではないだろうか。……と思ったが、Steamを導入してこんなゲームを遊んでいるということ自体がその"ふるい"となっているのかもしれない。
自分で気付いたこと:表現、伏線
act2のユリの事案の後は、バックログを見るとDDLCのゲーム説明文+αが表示される。ちなみに1周目、スキップという手段がしばらく思いつかず「ここどうやって超すの?」とEnterキーを3分ほど連打していた。
act1の文化祭の朝、寝坊したサヨリをほっぽって先に学校に来たことに対し、モニカが「サヨリとは親しいんだから、彼女を宙ぶらりんにしちゃだめじゃない」と主人公をたしなめるシーンがある。3周目くらいでこの文の真意に気付いた時が一番興奮した。
ユリと一緒に本を読む場面、お茶を淹れに行く場面はact1とact2の両方で見るべき。自分は3周目でact1のお茶入れシーンを見て、モニカの苦悩と苦労を読み取ることができた。一緒に読書は1周目だったが、3周目の知見を得たことでようやくこれも理解できた。
これを受けて、ナツキの本が高い位置に置かれるイベントもモニカの仕業なのではないかと推察。こっちはact1のみにあるシーンなのを踏まえると、act1の時点でもモニカが行動を開始していることになる。
物語の核となる部分、「文芸部部長が手にする権限」の概念は自分で気付けたし、モニカがそれをどうしたかったのかも3周目にきちんと理解できた。やったね。自分はSCP財団のNeutralizedクラスの最終事案に似た雰囲気を感じ取った。
act1のユリとの作業イベントにて主人公がけがをした時の一連の流れ、最初は無意識に間接キスをした主人公の恋愛心境を描くのが目的なのだと思ったが、それ以前にユリの行動に彼女らしさが出ていることの方が重要だと後から気付いた。
感受性が乏しいのか、詩に心を揺さぶられる体験が出来なかった。悲しい。
ヒロインの対称性
自分が恋愛ゲームで特に気にしてしまう要素。メインヒロインとサブヒロインに分類できるゲームであっても、その中でつり合いが取れているかがとても気になる。もっともつり合いの基準なんて人それぞれだろうが。そんな自分がDDLCを判定すると、
- 未プレイでは4
- 少しプレイすれば明らかに 3-1
- 1回通してから少し考えた上で 2-1-1
- 周回プレイをすると2の扱いも違うことに気付いて結局 1-1-1-1
となった。以下、各キャラクターへのコメントを2~3行で。
サヨリ
可愛い。救済が必要。設定としては現実味が一番薄いように思われ、しかも(個人的には)可哀想度も高いということで悲痛な妄想が捗ってしまうキャラ。act1の最後のシーンでは彼女の手に注目すると良い…らしい。好きな単語が両極端に振れていて不気味さを感じる。
ナツキ
とある1シーンさえ除けば唯一製作者の良心が感じられるキャラ。周回プレイでも彼女と一緒にいるときは心が落ち着く。気が強いロリ系ピンク髪キャラという属性は自分的にはあまりピンと来ないが、それでもとても好きになれたキャラ。単語選びには素直にやればいいので困らない。
ユリ
キャラクター性の把握にさほど時間は要さなかったが、変化が速すぎてちょっと焦った。自分は上級者ではないので十二分にDokiDokiした。胸はナツキの言いがかりだったそうでちょっと安心。単語はところどころサヨリと混同しやすい。
モニカ
このゲームのメインヒロイン、ということでいいのだろうか。ちなみに他所の感想記事では「モニカァァァァァ!」という雰囲気である。自分は未プレイ第一印象の、4人対称という構図がずっと頭にあったために、あくまで「そういう形式のルート」なのだと捉えてしまった。それゆえ失礼ながら、初めは大した感想が出てこなかった。
が、作中act1,2の演出を根拠に、彼女に「一種のサブヒロイン」として見てみるとどうか。正確に文章化できるほどの考察はまだしていない。しかし自分はこの視点を追加することで、モニカのキャラクター性が大きく深まるように思えるのである。自分のように感性が鈍めの方には是非考えてみてほしい。
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サクッと書くつもりがかなり時間を費やしてしまったのでこの辺で打ち切る。どこもかしこも散文的でまとまりのない文章になってしまった。
自分の場合、全体を総括する感想は、納得のいくものを仕上げようとすると非常に時間がかかってしまう。そもそも恋愛ゲームは往年の名作といったものをほとんどプレイしていないし、この作品への思い入れも他の熱い語り部に比べれば浅いだろう。
それでも色々と思うことがあったので、このように記事にしてみた次第である。本当に良いゲームなので色々な人に知れ渡ってほしい。知り合いにプレイ者が現れないかなぁ…