ビルド杯公式選考の廃止
2024/11/16、デュエプレバトルアリーナの生放送にて、今後のデュエプレデッキビルド杯(以下:ビルド杯)の情報が告知された。 それによると、28弾からのビルド杯では、デュエプレ運営による投稿作の選考ならびに入賞作の発表を廃止するそうである。
(動画時間 5:38:10-)
ビルド杯というイベント自体は存続するそうだが、その規模は縮小されることとなる。シンプルに残念だ。
最近の自分は入賞を目指して投稿していたわけではなかったが、毎弾環境中期のゲーム更新の直前、入賞作が発表される瞬間をワクワクしながら待っていたのもまた事実である。 選考&入賞というシステムは、少なからず自分の楽しみになっていた。
入賞を目標にしてデッキ作りに励むビルダーも何人もいた。 実力を余すことなく発揮して複数回の入賞を勝ち取る者もいれば、それに勝るとも劣らないセンスを持ちながら惜しくも入賞を逃す者もいた。 特に後者に対して、自分は「入賞は時間の問題だろう」と考えていた。 しかしながら、その楽天的な発想もここまでのようである。
とはいえそもそも、カジュアルビルディングという非常にニッチな遊び方に対して、公式からこのようにスポットライトを当ててもらえたのはとてもありがたいことだ。
初めてデッキビルド杯が開催された9弾から実に3年半もの間、選考を続けてくれたことに感謝したい。
公式のコメント
クボ研究員からの説明にいくつか興味深い点があったので、該当部分のYouTube字幕(一部編集)を引用しつつコメントしていく。
皆さんに投稿いただいているデッキがですねそれぞれ本当にもう個性に溢れていると言いますか
なんかよく考えたなみたいなデッキも、毎回我々の運営チームとしてもいつも楽しみにしておりますし
先日デュエプレで取っているアンケートでもこのデュエルプレデッキビルド杯について皆様にお伺いしたんですけども
他の方の投稿されてるデッキを参考にしてるよという方は非常に多くございました
27弾中期のアンケートにて、初めてビルド杯についての質問が登場していた。 今思えば、ビルド杯の存続を問うものだったのかもしれない。
少なくとも、「投稿されているデッキレシピを参考にしたことがある」という項目には多く票が入ったようだ。 ……普通のユーザーの参考になるデッキは極めて少ないと思うのだが、今はツッコまないことにしよう。
結果によってはイベントの完全な廃止もありえたと考えると、我々は最悪の事態を食い止めることができたとも言える。


ただですね、本当にご好評いただきすぎまして、
その毎回もう最近1000件を超えるようなデッキを
26弾以降、投稿数は1000件を超えている。 それまでも700-900件程度の間で推移していた。
ちょっと大変あのお恥ずかしい限りなんですけども
毎回このデッキビルド杯のデッキレシピをサンプルレシピを作ったりですとか
皆様のデッキを拝見してその入賞デッキを選んでいる僕の弟子がいるんですけど
本当に1つ1つのデッキをじっくり見て、自分で実際に試したりして入賞していたんです
あまりに大変すぎるということで、大変心苦しい限りではあるんですけども、
今回仕様を変えさせていただくことになりました
サンプルレシピを作っているのは当然スタッフ。 そして以前からカジュアルビルダーの間では言われていたことだが、スタッフが実際にデッキを組んで回していたことが公言された。 過去の入賞説明文には、「回してみて奥深さに気付いた」といった記述も見られていた。 選考に対して真摯に取り組んでいてくれたことが分かる。
ビルド杯に生じていた歪み
公式の説明に心動かされたところで恐縮だが、ビルド杯には我々にも分かる範囲で歪みが生じていたことを忘れるべきではないだろう。
選評文が長すぎる!
20弾の頃から、公式の選考傾向が変わった。 具体的には、派手なループや盾焼却など、誰が見てもコンボデッキと分かるようなタイプのデッキが選ばれるようになった。 このこと自体に良し悪しは無いと思っているし、それ以前に主観によるところが大きいため、これだけでは説得力に欠ける。
しかしそれと連動するようにして、公式の選評文が妙に長くなった。 結果発表記事の総文字数は、19弾以前が毎回3000字程度だったのに対し、20弾は4600字、21弾以降は毎回7000字程度に膨れ上がっている。 おそらく「クボ研究員の弟子」が新しい世代に変わったのだと思う。
丁寧に選評を書いていただけるのは大変ありがたい。 しかし、デッキを回した上でここまで長い文章を書くのは骨が折れるだろう。 ユーザーへの還元やゲーム売上への寄与としては、かなりコスパが悪いはずである。 選評文はもう少し手を抜いても構わないと思っていたのだが、この結果を見るにやはり無理があったのではないか。
サンプルレシピがしょーもない!
カジュアルビルダーの間で評判が悪かったのが、最近の公式の投稿例が邪道すぎること。 最新の27弾から、選考傾向が変わった20弾まで、公式のサンプルレシピを見てみよう。
- 27弾:『白天秤アダムスキー』
- クロニクル:『二刀流ユニバース』
- 26弾:『正体不明ドギラゴンLO』
- 25弾:『バキュームドギラゴン』
- 24弾:『ダイシャリンエタトラループ』
- 23弾:『リンシャンカイホバウンスLO』
- 22弾:『マグナムサイクリカLO』
- 21弾:『キキカイカイシューマッハLO』
- 20弾:『ファンクラ学校耐久LO』
ご覧の通り、まともな勝ち方をするデッキが無い。
こういうゲテモノはユーザーが好き勝手に作るから笑えるのであって、公式が押し出すのは役割が違う。 サンプルレシピなんて、ちょっとマイナーなカードを普通に使うくらいでいい。 自分個人としても、そういうデッキのほうが好みである。
【 #デュエプレデッキビルド杯 投稿例】
— デュエル・マスターズ プレイス【公式】 (@dmps_info) 2023年11月23日
▽デッキ名
紺碧の英雄
▽デッキの特徴
《サイクリカ》と《スパイラル・ハリケーン》で、
相手のバトルゾーンを常に空に!
《ガンリキ》で行動を封じ、
《リンシャンカイホ》で自分の山札を回復!
▽デッキへの思い
あとは、わかるな・・・?#デュエプレ pic.twitter.com/iGdXL6X8BZ
「あとは、わかるな・・・?」じゃねぇんだよ テメーは地獄スクラップだ
しかしながら、先程のクボ研究員の説明を聞いてから改めて見てみると、毎度サンプルレシピの作成に苦しんでいたのだろうと推測できる。 選評文もそうだが、スタッフさんはもう少し肩の力を抜いてよかっただろう。
我々は自滅したのか?
公式への疑問点だけ挙げては不公平なので、自らの振る舞いも省みよう。 ズバリ、公式に負担をかけて潰してしまったのは、我々カジュアルビルダー自身なのでは?という観点からの考察である。
自分の見解は、「部分的にそうだが、要因の全てではない」である。
ビルド杯配信による投稿加速
自分はYouTubeにて、「デッキビルド杯配信」を10弾の頃からやってきた。 投稿作を眺めて、好き勝手に喋る配信である。 同接は30前後。視聴者層は相当なコアユーザーに限られている。
大変嬉しいことに、この配信でミケガモやコメント欄からの評価を貰うのが楽しみだと言ってくれる方が何人もいた。 ビルド杯配信は、こうした方々のモチベーションを刺激し、投稿を加速させていた側面はあるかもしれない。 そして自分もしばしば「アイデアを世に出さないのは勿体ない。誰かの参考になるかもしれないし、迷うくらいなら投稿しよう」と、積極的な投稿を促していた。
正直に言えば、最近の投稿数の増加は嬉しくもありながら、同時に危機感を覚えていた部分もあった。 公式がパンクしてしまい、ビルド杯存続が危うくなるパターンも想定はしていた。 もし仮に「公式入賞を夢見つつも、ビルド杯配信は目の敵にしている」人がいたら、その人には申し訳ないことをしたかもしれない。
一方、少なくとも30人程度のユーザーは、ビルド杯と配信の両方を楽しんでくれていたと信じている。 自分は、我々の熱意が間違いだったとは思わない。ただ単に、その総量が運営スタッフのキャパシティを超えてしまったのである。 諭すようなことを言うのもどうかと思うが、今まで受けてきた恩恵を噛み締めながら、あるがままを受け入れるしかないだろう。
ガチ勢の割合
ところで、そもそもビルダーガチ勢の影響はどの程度あったのだろうか。 18弾の時に一度だけ、その統計を取ったことがある。*1
18弾ビルド杯投稿数の統計。
— ミケガモ (@nusu_fkr453145) 2023年2月12日
5個以上投稿してる人(22人)をガチ勢とみなすと、その割合は人数比で約6%、投稿数全体の約35%。 pic.twitter.com/GdhVNa73H3
この時のデータでは、多数投稿するビルド杯ガチ勢は22人(配信の同接とそう変わらない数)。 その投稿数は、全体の1/3程度を占める。
他方、デッキを1-2個投稿する人たちの分だけで、投稿の過半数となる。 これだけのライト層がいれば、ビルド杯がガチ勢によって占拠されているとは言えまい。
実際配信をしていると、特に最近は新規と思われるユーザーからの投稿が多く見られていた。 E3以降、紙の能力準拠での実装が増えてきたこともあって、TCG勢がデュエプレを初めてくれているのではないかと思う。 ビルド杯の盛況ぶりは、ガチ勢の熱狂だけでなく、ライト層の拡大によるところも大きい。
さらに、公式はライト層の投稿まできちんと目を通している。 ガチ勢の入賞が多いのは事実だが、それは単純に彼らのビルディングが上手いからである。 そんな中、例えば27弾入賞作の『焼却パラス』は、(観測できる範囲では)ガチ勢からの投稿ではない。 今回のデュエプレ公式の判断はやはり、全ユーザーの投稿をしっかり選考するという観点で存続が厳しい、ということなのではないか。
実はそこまで……
冒頭で残念だとは言ったが、実は自分自身はそれほど大きいショックを受けているわけではなかったりする。
幸運にも、自分は入賞経験が2回ある。 その上で、数多くのビルド杯配信をこなすうち、もはやそれだけで満足するようになってしまった。 特に最近は、自分自身の入賞を渇望していなかった。
デッキレシピを多くの人に知ってもらうという点では、ブログとYouTubeがある。 ビルド杯で入賞せずとも、発信のモチベーションは自分で満たすことができる。
そして、縮小体制とはいえ、イベント自体が続いてくれるのであれば致命的ではない。 今まで通りに投稿作を見て勉強し、自分の糧とすることができる。 もしかすると、ユーザー全体のモチベーション低下が、投稿の量・質に現れる可能性もある。 が、ここまで走り続けてきたユーザーの勢いは、突如全て失われることもないだろうと楽観視している。
これからの方針
ひとまず、ビルド杯配信はこれまで通りに続ける。レビュー記事もなるべく書く。
ただ、公式選考の有無に関係なく、ビルド杯配信の合計時間が長過ぎる。 27弾は、2週間足らずの間に計35時間も配信していた。もう少し負担を軽減できないか考えたい。
それに、ある日突然配信ができなくなる可能性もゼロではない。 今回のビルド杯リニューアルは、そういった環境の変化への予行演習と言えるかもしれない。
ミケガモが公式選考を代替したり、それに相当する催しを企画する予定は無い。 自分一人で選べばただの個人の好みになってしまうし、協力者を募ろうにもお願いしなければならない負担が大きすぎる。 今以上に自ら手を広げれば、次に破綻するのは自分である。
ただし、もしビルド杯関連でなにかミケガモに協力を仰ぎたいことがあれば、相談はウェルカムである。 カジュアルビルディングを奨励するという目的ならば、協力は惜しまない。
変わる点があるとすれば、ビルド杯期間中および直後の動画化判断である。 今まではビルド杯の結果が発表されるまで、ビルド杯に投稿されたデッキレシピの動画化は極力避けてきた。 レシピを広めることで、公式選考に影響が出たり、結果発表のインパクトが薄れてしまったりするのは望ましくないからである。
公式選考がなくなるのであれば、そういった心配は要らなくなる。 良いデッキの動画化を早めに消化できれば、ミケガモチャンネル恒例の新弾直前の駆け込み投稿がいくらか緩和できるかもしれない。
普通の参加者の視点でも、期間中に他の人の投稿を引用リツイートで広めたり、 アイデア被りやブラッシュアップ版を遠慮せず投稿したりといった、 利己的・利他的な行動が自由にできるようになるのはメリットかもしれない。
裏ビルド杯もヨロシク
ビルド杯関連で言えば、「裏デッキビルド杯」のことも触れておくべきだろう。 こちらは有志主催の、カジュアルデッキ対戦&選評会である。
カジュアルデッキを持ち込んでスイスドローの対戦会に参加し、対戦が終わったら、良いと思ったレシピに投票する。 投票数の多かったレシピは「入賞作」としてTwitter上で表彰される。 使用デッキは、主催のnoteに毎回掲載される。
こちらは11弾の頃から開催されていて、毎回ミケガモチャンネルで観戦配信をしている。 非公式ではあるが、とにかく何かで入賞したい!と強く願うのであれば、こちらに精を出してみるのもよかろう。 もっとも、単純に楽しいイベントなので、それこそカジュアルに参加してみるのもオススメである。
あるいは、有志主催の疑似ビルド杯イベントに期待したり、自分で企画したりしてみてもよいかもしれない。
自慢のループデッキを投稿しよう!
— おてもと (@42_0d) 2024年11月11日
『#デュエプレループ杯』を開催します!
とっておき、渾身のループデッキをお持ちの方はモ・チ・ロ・ン!!
まだループデッキをあまり使ったことがない人も、この機にぜひ作ってみて、応募しちゃってください!!
詳細はこちら↓ pic.twitter.com/Buo2yqRVj4
これらも主催者の負担がものすごいイベントではあるので、今を全力で楽しんでおくのが吉。 と同時に、対戦会等だけであれば、縮小版を他ユーザーが開くことも可能だとは思う。 公式選考と違って、こちらは一定のバックアップ体制もある……と言ってよいだろう。
まとめ
改めて、公式によるイベント開催に感謝を述べたい。 デッキビルド杯のおかげで出会えたレシピやビルダーは数え切れない。 ユーザーの参加を促すため、手間のかかる選考&入賞の体制を取ってくれたことは本当にありがたい。
デッキビルド杯に関して、自分は最も特殊な立場にいると思う。 この記事と考えが食い違うところがあっても、それはお互い全く構わない。
もし入賞へのモチベーションが行き場をなくしてしまっているのであれば、その発散先を見つけるのもよいだろう。 裏ビルド杯に力を入れるもよし、記事執筆や動画投稿を始めるもよしである。
自分は、安定かつ強固な地盤を築くのが理想だと考えている。 今回、それが少しだけ崩れた。 しかし、この程度はものともしない地盤が、既に出来上がっているものと信じている。