ミケガモのブログ

「究極進化」は成功したのか?【デュエプレ】

はじめに

新弾が出ましたので、ここで究極進化の振り返りや環境への影響、各々の強さをミケガモさんの記事で読んでみたいです。

https://odaibako.net/detail/request/c1184adb-921e-49fa-b260-623ad5dd9236

究極進化は、神化編を象徴するギミックの一つ。 しかし残念なことに、紙の環境では全く存在感がなかった。

デュエプレでは、こういう「残念ギミック」をテコ入れして実装するのがお決まりとなっている。 これまでには進化GV・ゴッド・クロスギアなどが、そうやって環境入りを果たしてきた。 当然、究極進化にもその期待はかかるわけだが、実際はどうだったのだろうか。

12弾で究極進化が辿った運命をここに記録しておこう。

※一部、カード名を独特な略し方で書いています。想像力で補完してください。

ルナティック進化

デュエプレの究極進化カードは、従来どおり進化クリーチャーから進化する"本体"と、普通の進化クリーチャーのように出す"進化前"の2種類を選べるチョイスカードとなった。 "進化前"の《羅月》は、場にいる状態で改めてコストを払うことで、"本体"へ「成長」できる(ルナティック進化)。

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https://twitter.com/dmps_info/status/1481593732537352197?s=20&t=a9_9muns_zs9Dvd5RHGbmg

実は、チョイス式かつ1枚のカードを「成長」させるという仕組みは、ゴッドカードで予行済みだ。 対となるカードを2枚(もしくはそれ以上)揃えなければならなかったゴッドと、 進化クリーチャーと本体でやはり2枚のカードプレイが必要だった究極進化には、同じ救済方式が通用するのであった。

ルナティック進化の最大の功績は、進化元となる進化クリーチャーにスペースを割く必要がなくなったことだろう。 紙版で究極進化を使おうと思うと、デッキは「究極進化・進化クリーチャー・その進化元」という3層構造になる。 この構成では、手札事故とリソース不足に陥るのは宿命である。

その点ルナティック進化なら、普通の進化クリーチャーと同様に「ルナティック・その進化元」という2層で済む。 進化・ルナティック進化と段階を踏むのは少し手間だが、そこは進化条件を緩くすることで譲歩している。 もちろん、紙と同様に進化クリーチャーと組み合わせても良いので、昔の雰囲気を損ねない。 これもまた、デュエプレ開発班の妙手であったといえよう。

余談だが、究極進化サポートとして「激強進化クリーチャー」を量産する選択肢もあったと思う。 しかし、デュエプレ開発班はこの選択肢を取らなかった。 究極進化に適した進化クリーチャーを出す試みは、神化編で失敗に終わっている(例:軽量進化、デッキ進化)。 むしろその進化クリーチャー自身が強すぎて、究極進化せずに戦っていたほどだ(例:《デスマーチ》)。 この苦い経験があったからこそ、二の鉄を踏まずに済んだのだと思う。

その一方で、ゴッドカードほどの汎用性が無いのはネックだ。 ゴッドは、カード1枚で完結している点と、左右の好きな方から召喚できる柔軟さが強みである。 対するルナティックは、進化元が必要な上、必ず《羅月》形態から入らなければならない。 究極進化を採用したいデッキは、ゴッドカードに比べると少ない。

環境において

デュエプレのガチ環境における究極進化は、正直言ってパッとしなかった。 各クリーチャーの個別評価は後にまとめるが、 総括するなら「シナジーの強いデッキでは活躍するものの、単体ではあまり使われない」という感じだった。

環境がほぼ変わらなかった5弾の「五王」よりかは幾分かマシだとは思うが、 逆に言うとそれを比較に上げたくなるくらいには微妙だ。

良くなかった点は、特に羅月形態がスペック不足だったことだろうか。 《羅月トルネード》などは出たときに1アド取ってくれるが、それも進化元が1体必要な時点でプラマイゼロである。 基本シングルブレイカー、出しただけではアド量も微妙なので、基本的にはルナティック進化しないと話にならない。

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ちょっと物足りない。

それすなわち、究極進化カードの力を発揮させるには、種・羅月・ルナティック進化で計3ターンを消費する必要があるということ。 当然その間には相手の除去や攻撃が来るわけだが、それを乗り越える価値が神羅形態にあるかというと、残念ながら彼らはそこまで強くない。

羅月が「除去されても損にならない、放置されたらルナティック進化」というデザインだったなら、もっと使いやすかったはずだ。これを実現できているのは、環境で最も活躍した《サンライズ・NEX》だけである。

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ドローできる上に除去耐性。つえー。

さらに良くないことに、羅月と神羅のコストは全て2離れているので、 普通のプレイングだとスムーズな繋ぎにはならない(ブーストできる《トルム》除く)。 アッパーされた2-1000神羅軽減サイクルはこの問題を解決しようという試みなのだろう。 コイツらは強いのだが、そこにスペースを割かなければいけないため、デッキ構築の自由度が下がってしまうのは残念。

また、12弾の環境も神羅にとっては生きづらかった。 【NEX】【剣誠】はものすごい速度で打点を組んでくるので、究極進化が間に合わない。 遅めの立ち上がりだとしても、【キリコ】や【ライゾウ】に比べると出力が低い。 究極進化は一点集中のカードゆえ、コントロールの《ヘヴィ》にも弱い。 この環境で、ルナティック進化を使いこなすのはかなり難しかった。

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やめて!

ごちゃごちゃ説明したが、端的に言うとカードのスペック不足である。 五王のときもそうだったかもしれないが、 文明進化は種族進化に比べて汎用性が高いので、強化に慎重になってしまうのはわかる。 しかしながら、「進化」というギミックはもともと癖が強い。 特に羅月形態に関して、もっと性能を盛っても良かったんじゃないだろか。

開発版の思惑

デュエプレ開発班は、究極進化を相当張り切って作ったと思う。

《ブリム》《サンダム》は大幅に効果改変。羅月形態は全てイラスト描き下ろし。 ルナティック進化するときのアニメーションは新規だし、 究極進化カードをパックから引いたときには専用の演出まで入る。

公式の宣伝体制も、それはもう力が入っていた。

最初にTwitterで公開された《NEX》を差し置いて、12弾1本目の公式動画となった《トルネード・ムーン》。

youtu.be

リリースから3週間経った謎タイミングで、 《ブリム》《トルム》《スカム》をプッシュしてきた公式動画。

youtu.be

さらにその1週間後というこれまた唐突なタイミングで更新され、究極進化を推してきた開発ニュースレター。

dmps.takaratomy.co.jp

SR不遇の時代が長かったビルド杯で、堂々の入賞を果たした『オールムーン』。

dmps.takaratomy.co.jp

しまいにはお手上げと言わんばかりに、《ブリム》《トルム》《スカム》の使用率が低いのを認め、 周辺パーツおよび《ラスカル》《スカム》にアッパー調整。

dmps.takaratomy.co.jp

これらを見ると、頑張って開発したのに究極進化の存在感が薄くて、歯痒い思いをした開発スタッフの顔が目に浮かぶ。 現実は辛く厳しい。

ちなみに、使用率の低かったアナカラーの神羅3体は、固有召喚アニメーションを貰えなかったメンバーでもある。 そういうとこだぞ。

アッパー調整について

12弾リリースから1ヶ月後、以下のアッパー調整が入った。

  • 進化軽減の2-1000サイクルに、神羅を2軽減する効果が追加
    • 羅月は軽くならない
  • 《ラスカル》の道連れ効果が布告から最大除去に
  • 《スカム》のコスト1減、自身の破壊置換は回数無制限

神羅2軽減に関しては先に述べた通り、羅月と神羅のコストが2離れていてマナカーブが悪い問題への対処だ。 《コッコ》や《キリノ》然り、2マナ軽減は流石に強い。

《スカム》については後の個別評価で述べるが、これでやっとスタートラインに立つことができた。

過程が過程なだけに滑稽に見えるかもしれないが、アッパー調整は英断だったと思う。 おかげで、《ブリム》《スカム》が多少なりともランクマで使われるようになった。 ……《ソルフェニ》もこんな感じのアッパーだったら良かったのに。

神羅の個別評価

それぞれの究極進化に対してコメント。

神羅サンダー・ムーン》《羅月サンダー》

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事前評価は一番高かった。

10マナという数字は飾り(紙版の雰囲気を残した?)で、実際のコストは7。 《ランダー》のcipは、直接的に《サンダム》の下準備になる。 専用召喚エフェクトも貰うなど、特に優遇されていた神羅である。

環境では、【サンダーフュージョン】としてそこそこ使われた。 進化元は《ウルコス》《ボルシャリオ》《ジャック》《ベガ》《デリンダー》と粒ぞろい。 発売前は、このデッキタイプが環境を取るだろうと予想するプレイヤーも多くいた。

だが実際は、せいぜいTier2止まりのデッキだった。

上手く回れば6t《フュージョン》でほぼ勝ち確だが、12弾環境の【剣誠】【NEX】【キリコ】【Bロマ】は、上振れムーブだと5tで相手に致命傷を与えられる。 多色が多くて事故りやすいため、これらのデッキに比べると上振れを引く率は低い。 13マナ貯める元来の【フュージョン】では気にならなかった、「マナにゴッドが埋まらない」という悩みも新たに抱えている。 爆発力はさておき、速度・安定感が環境デッキに比べて劣っていた。

さらに12弾環境では、《剣誠》や《ライジング》の火力、【ナイト】の《アルカディア・エッグ》、コントロール系の《ヘヴィ》など、《ランダー》が除去されやすかった。 ビッグムーブが好きなプレイヤーに取り入ろうにも、【ライゾウ】【キリコ】らと競わねばならない。 下馬評とは裏腹に、厳しい戦いを強いられていた。

ここまで《フュージョン》の話しかしていないことから察したと思うが、《フュージョン》以外の呪文を撃っているところは滅多に見ない。 専用呪文《神羅奥義 ルナティック・ギャラクシー》まで貰っておきながらこの有様である。 結局《フュージョン》から出てくるゴッドが強いだけというのも涙を誘う。

神羅リザード・ムーン》《羅月ブリザード

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劇的ビフォーアフター 紙では攻撃時3ドローなどという舐め腐った効果だったので、強化してもらえて本当に良かった。 さり気なく得た攻撃・ブロック避けもかなり強い。

出して1回攻撃できれば仕事としては十分なので、他の神羅と違って除去に怯えなくていいのは嬉しい。

とはいえ、ここまで突き抜けていると扱いが難しい。 盤面干渉不可・増えるのは手札だけ・Wブレイクしかできないので、ビート系に弱すぎるのが課題である。

12弾連中では《ラブリ》のみ、cipアドすら取れないのはちょっと渋い(13弾の《ラドラグ》も仲間)。 どのみち《ブリム》でドローできるので、《ラブリ》で殴る意味もなくなっている。

「リソースをアホほど取れて、性能的に強すぎない」というのがボクの好みをバッチリ抑えている。 自分は青緑ベースで使っていたが、《アクア・エボリューター》が上方修正されてからは青黒ベースの研究も進んだ。

mikegamo.hatenablog.com

神羅スカル・ムーン》《羅月スカル》

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究極進化の中では唯一、すぐに攻めなくてもいいのが特徴。 味方保護も強いので、出ているだけでじわじわと状況がこちらに傾いていくプレッシャーカードである。

ただし、初期版は何もかもが弱すぎた。 12弾環境において、8コストなど重すぎて論外だ。 自身含めターン1回限定は紙よりも弱くなっているし、 デュエプレには《花籠》《ヴンとレンス》と非破壊除去が豊富。 カジュアルレベルでも使う気が起きなかった。

アッパー調整されてからは、だいぶ使い勝手が良くなった。 他と同様、羅月と神羅のコスト差が2になった。 《ラヴァール》のアッパーも込みで、マナカーブは大幅に改善された。 味方保護の性能はそのままに、自身には無限の破壊耐性を得た。 ようやく「紙と比べて強化された」状態になったわけだ。 流石に環境を変えるまでには至らなかったが、環境最終盤には使おうと試みる人がぽつぽつ出ていた。

リリース3日後には見向きもされていなかったのを考えれば、大いに救われたと言える。 個人的にも、《ダーク・ヒドラ》に活躍の場を与えてくれたので感謝している。

mikegamo.hatenablog.com

ちなみにこういう不具合があった(現在は修正済み)。自分以外に気付いている人はいたのか。

神羅ライジング・NEX》《羅月サンライズ・NEX》

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効果ながながドラゴン。 《サンライズ》《ライジング》の破壊時後続リアニメイト効果は、他の究極進化が願ってやまない疑似除去耐性である。

全盛期【NEX】のサブギミックとして、八面六臂の活躍だった。 《ブレイブ》から持ってこれて、小型焼却でチャンプブロッカー潰し、 《サンライズ》でリソース確保、破壊時の後続リアニメイト。 【NEX】に弱点がないと言われたのは、8割コイツのおかげである。 《ライジング》のことを考えると、究極進化が失敗だったとは言えまい。

サンライズ》《ライジング》両方ドラゴン持ちな上、元のコストが軽いのがポイントである。 おかげで、《コッコ》が横にいれば6マナで進化速攻《ライジング》できてしまう(バードを捨てれば手札も減らない)。

逆に言うと、《ライジング》単体は至極まっとうなスペックだ。 一つ一つの効果は割と地味で、《ライジング》のみですぐに決着することはない。 ドラゴンも「NEX」の名も剥奪した場合、単体の強さは《ブリム》と同じくらいだと思う。

ファイアー・バードかドラゴンの上にしか置けないので、アッパーされた《B-BOY》は一人だけ手持ち無沙汰だった。

神羅トルネード・ムーン》《羅月トルネード》

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脳筋 Qブレイクは恐ろしいが、7マナ払って出てきているなら他にもっと怖いカードがある。 神羅単体の性能としては一番残念かも。

《ラトル》のブースト&回収は汎用性が高いように見えて、 5マナ払うなら《トリプルマウス》でそれ以上のことができる。

環境では、【ジャイアント】デッキの押し込み要員として採用された。 11弾の《ドルゲユキムラ》で勢いづいた【ジャイアント】を、 マスター上位を狙えるデッキタイプに押し上げた最後のピースである。

活躍のカギはやっぱりコスト軽減。 《キリノ》による軽減で《ラトル》《トルム》の進化速攻が組めたのが大きかった。 大量のジャイアントで打点が揃っている状況では、貫通の2枚ブレイクも相当なプレッシャーになる。

緑の神羅支援の《ケットウ・チューリップ》の種族はワイルド・ベジーズ。 サイクルの中で唯一、進化クリーチャーが1体もいない種族なので、他カードとのシナジーを見つけてデッキを組むのが難しい。 緑はもとからブーストが得意であること、《ラトル》のブーストで《トルム》へそのまま繋がることも考えると、 コイツを採用する意味は殆どない。

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神羅ドラグ・ムーン》《羅月ドラグ》

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デュエプレ開発班のNEX推しのせいで、神化編1弾サイクルからハブられていた人。 VRになってしまったが、ともかく参戦できたことに感謝だ。

《ラドラグ》は出たときにアドが取れない。 火力を撃つだけのありがちなデザインに収まってしまっている。

《ドラグム》の6000以下全破壊は【NEX】に刺さるだろうと期待していたが、その【NEX】はナーフによって数が激減した。 今の所、コイツが使われているところは滅多に見ない。

ドラゴンなので、《ライジング》《トルネード》同様にコスト軽減の恩恵が大きい。 しかし、元が軽い《ライジング》、しばしば《キリノ》2体で4軽減になる《トルム》と違って、 進化速攻するにしても8マナ払う羽目になりそうである。 《ライジング》の最弱火力と破壊耐性、《トルム》の馬鹿打点はどんな相手にも効果があるが、 《ドラグム》の6000火力は全ての相手に刺さるわけではない。 どっちかというと、【マルコビート】のようなデッキにたらればで2枚くらい積んでおきたいカードである。 そうなると、《コッコ》で全力で軽減を狙う構成にはならないだろう。

そもそも、全体火力は《デスドラ》と差別化しないといけない。前途多難。

おわりに

どれも悪くはないのだが、環境で使うにはあと一歩なところで止まってしまったカードが多かった。

自分だけかもしれないが、究極進化連中には五王のような魅力というか、 将来の発展性のようなものを感じ取ることができない。 イラストやギミックは普通に好きなのだが……。 誰かこの感覚を説明してくれ。