ミケガモのブログ

【デュエプレ】ハンデスは何故弱くなったのか【DMPP-08ex】

お題

いつも素晴らしいデュエプレ考察をありがとうございます、記事更新を楽しみにしているファンの1人です。

ミケガモさんにデュエプレのハンデス、手札破壊について考察記事をリクエストしてみたいです。

理由として前回のバトルアリーナ本戦を見て気になったのですが、本戦の中だけなのですがハンデスという行為が全く行われておらず、そのハンデスを行うカードも本戦の選手が1人だけが確かロストソウルを握ってそのままマナ送りにする程度など、その存在感は0に等しいモノでした。 

一時期はポインターやロストソウルが飛び交う試合が多かったのでここまでハンデスが減少した理由やデュエプレのハンデス歴史のご一考を良ければお願いします。

https://odaibako.net/detail/request/b85fcbcb-abaf-4fae-bc5b-ff576e827107

さあ、困った。

自分がランクマで握ったことのあるデッキの中で、純粋なコントロールと呼べるものはDMPP-03環境の【ドロマーイニシエート】しかない。

コントロール同士のハンデス合戦をくぐり抜けたプレイヤーではない自分に、説得力のある記事が書けるだろうか。

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ハンデスはベーシックデッキにも入っている。

ハンデスとは

ハンデスとは、ハンド・デストラクション(Hand Destruction)の略。 相手の手札を墓地などのゾーンに移動させ、自由に使わせなくすること。 「手札破壊」とも言う。 - DM wikiハンデス」より(一部改変)

ハンデス - デュエル・マスターズ Wiki

ハンデス、すなわち手札破壊は、クリーチャー破壊に次いでメジャーな、相手のカードを使えなくする妨害手段である。 (その下には、ランデス・シールド焼却と続く)

本家DMおよびデュエプレ初期には、コントロールデッキの必須要素として使われ続けた手段だ。

ところが、今のデュエプレではハンデスカードの使用率が随分と低い。

この記事では、デュエプレにおけるハンデスの立ち位置と、 使用率が下がっていった背景を簡潔に整理してみたい。

ハンデスしている暇が無い

ハンデスは、盤面を触る価値が無い時の妨害手段である。 基本的には「相手の場に脅威となるクリーチャーはいない、でも相手の動きを妨害したい」というときにお呼びがかかる。

ところで、今のデュエプレは、クリーチャーのカードパワーが順調にインフレしてきている。

ビートダウンには、《パンダネルラ》や《ソルダリオス》のように、 展開力が極めて高いカードが存在している。 1枚程度トリガー除去を踏ませても、防御に徹しなければ押し負けてしまう。

以前は打点形勢が遅かったコントロールデッキにも、 《連珠の精霊アガピトス》《超鎧亜キングダム・ゲオルグ》《竜極神ゲキメツ》など、 盤面での圧が高いクリーチャーが採用されるようになった。 昔と比べると、いざとなった時に殴りに行く選択肢が格段に取りやすくなっている。

これらを無視してハンデスする余裕は無い。

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軽量ランダムハンデスは重要だった

ナーフ前の《ゴースト・タッチ》は、2マナでランダムハンデスする呪文だった。 たかが1-1交換、しかも撃った側が一方的にコストを支払うこの呪文が、なぜあれほど採用されていたのか。

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その理由は、相手のマナカーブに沿った動きを妨害できる可能性があったからだ。

各々のデッキの出力は、毎ターンマナを使い切るようにカードをプレイして初めて、 設計通りに発揮される。 ランダムハンデスは、そのプレイを対戦中に崩しうるギミックである。

相手が次に使うつもりでいたカードを使えなくできれば、 相手のマナカーブに沿ったゲームプランは大きく崩れる。 デッキの出力が弱まれば、見かけ上の1-1交換以上にアドバンテージが取れる。

ナーフされた《タッチ》《汽車》は、上記の強みを失った。 カードパワーが大きく下がったため、ガチデッキに入れるには力不足である。

軽量ハンデスが無いと、中型ハンデスの《アクアポインター》などの威力も下がる。 結果として、ハンデスを主軸にしたデッキは成り立たなくなっている。

《ジェニー》ではダメ?

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関連して、《解体人形ジェニー》について。

引き抜くカードが決まっている《ジェニー》は、ナーフを受けた《汽車男》よりも強いかに見える。

しかし《ジェニー》には、《汽車男》の代わりを務めることはできない。 「最高コストのカードを引き抜く」という性質上、中コスト帯のマナカーブを崩せない可能性が高いからだ。 さらに直近だと、コストを持たないゴッド・カードまで出現している。 《竜極神》《G・A・E》を落とせない仕様なのも、やはり厳しい。*1

《ジェニー》は、《タッチ》《汽車》の後継となれるカードではない。 この辺は、開発班の調整の上手さでもある。

相対的なカードパワー不足

今使われているハンデスカードの多くは、最近のインフレの波に乗っていないカードである。

ハンデスはインフレの影響を受けにくい」というのは、確かに一つの定説だ。 しかし、《ゲオルグ》《メツ》のような盤面制圧力の高いカードが出てくると、 妨害札としてのハンデスのパワーは、相対的に低くなる。

また、ハンデスをものともしないカードが出てきているのも大きいだろう。 《口寄の化身》や《無双竜機ボルグレス・バーズ》、最たる例が《インビンシブル・テクノロジー》。 こういうカードをひとたびプレイされれば、少量のハンデスはほとんど意味をなさなくなる。

コントロールする側・される側ともに、 旧来のハンデスを凌ぐスペックのカードを持つようになってきている。

忌み嫌われたハンデス

ここまでハンデスが弱くなったのには、 ハンデスがユーザーから忌み嫌われているという背景がある。

ハンデスが好きなのは、 本家DMのガチ環境を生き抜いてきたコアユーザーだけである。 子供の頃に平和なデュエマを遊んでいた層にとって、 これから意気揚々とプレイするつもりだったカードを刈り取るハンデスは、 まさに楽しみを奪う効果でしかない。

開発班がそれを汲み取るのは遅かったようだが、 今はハンデスカードの実装を控える方向に舵を切っているのは間違いない。

比較として、DCG先駆者のシャドウバースは、ハンデスカードが非常に少ない。 そのせいでしばしば「メンコ」などと揶揄されたりするが、 それはライト層にもストレスなく遊んでほしいという気遣いから来ているのだと思う。

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ひとまとめ

今のデュエプレ環境では、ハンデスはあまり強くない。 その要因は、クリーチャーのインフレによって盤面制圧の重要性が増したこと、 軽量ランダムハンデスが無いこと、およびハンデス以外のカードが充実したことである。

ハンデスの歴史

なるべく当時の感覚を思い出して書いた。 でも自分がコントロールを使ってこなかったのでうろ覚え。

自分が今まで書いてきた環境考察の記事も参考にしてほしい。

1~2弾

ハンデスカードは、《タッチ》《汽車》《ロスソ》の3種類。

初期のデュエプレはクリーチャーのカードパワーが低かったため、ハンデスを撃つ余裕があった。 その一方で、クリーチャーを並べて殴る原始的な戦法も強かった。 ハンデスは補助的なコントロール手段」という原則が、まさにそのまま適用できる環境だった。

1弾は、《光輪の精霊 ピカリエ》を展開してからの《クエイク・ゲート》がコントロール側のアドバンテージ源。 盤面展開に手間をかける必要があったので、《タッチ》《汽車》はあくまでその補助のポジションだった。

2弾になると、《サウザンド・スピア》1枚で盤面を掃除できるようになった。 【クローシスボルコン】は《スピア》までの繋ぎとして、 《エナジー・ライト》と軽量ハンデスでハンドアドバンテージを取っていた。 ロングゲームを見た《ロスソ》も、【ボルコン】の重要パーツになりつつあった。

他のデッキだと、【ドロマーリーフ】や【青黒バロム】は、 潤沢なドローソースと軽量ランダムハンデスを組み合わせて、 ハンドアドバンテージを取るギミックを採用していた。

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余談だが、この辺りの環境は、ハンデスを気合で避けながら、 《二角の超人》《光輪の精霊 ピカリエ》といったパワーカードを確実にプレイするのが重要だった。 ブーストで手札を減らすと《二角》が《タッチ》で落とされるため、 【二角入りデイガボルコン】【ネクラアルカディアス】などの黒緑が共存するデッキでも、 2マナ枠は《ライフ》ではなく《タッチ》になることが多かった。

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3弾

ハンデスカードとして、《アクアポインター》《ガレック》《デモニック・バイスが追加された。 初のマッドネスとして、《緑神龍アーク・デラセルナ》も収録された。

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登場直後の《ポインター》が大暴れするように見えるかもしれないが、 実はハンデスデッキは環境トップではなかった。 この時代は《ダイヤモンド・ブリザード》《神滅竜騎ガルザーク》の攻撃力が高かったため、 ハンデスを撃つ余裕は無かったのである。

《タッチ》《汽車》は、手が空いた時の妨害として、引き続き補助的に採用され続けた。 《ポインター》まで積んだのは、鉄壁の【ドロマーイニシエート】と、対ビートを切った【青黒ボルバル】くらい。 《ロスソ》は、【ボルバル】系のデッキにコントロールミラー意識で積まれていた。

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ハンデスメタの《デラセルナ》は、主に【ドラゴン】の緑マナとして採用された。 ランダムハンデスを使わせにくくする因子ではあったが、 《デラセルナ》がなくても、《ガルザーク》の攻撃力や《黒神ゾルヴェール》の墓地回収でギリギリ立ち回ることはできた。

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4弾~5弾前半

悪夢の【5c天門】が登場。 【ブリザード】【ドラゴン】が受けられるデッキが出てきたせいで、一気にコントロール環境になった。

環境が【天門】に染まっていくにつれ、【天門】はミラーに強い《ロスソ》の採用枚数を増やした。 それまでの《ロスソ》は、積むにしても2枚が標準で、3枚だとやや多めといった感覚。 しかしこの【天門】環境では、最頻値が3枚で、4積みした構築もちらほらと見られた。 《ボルバルザーク》を出して適当にシールドブレイク → 追加ターンで《ロスソ》という鬼のようなプレイングもあった時代である。

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一方、この時代のもう一つの環境デッキ【青黒ボルバル】は、 手札を溜め込もうとする【天門】に対して序盤から軽量ハンデスを乱打するべく、 《タッチ》《汽車》《ポインター》をガン積みしていた。 《エクストリーム・クロウラー》で《汽車》《ポインター》を使い回すのが主流だったので、 《ロスソ》は不要だった。

4弾登場【ネクラウェーブ】が持つ《略奪秘宝ジャギラ》のハンデスも、 決まればコントロールの両デッキをも粉砕しうるパワーがあった。 しかし、先攻《ヘブンズ》《ザーディア》や、《タッチ》《汽車》連打からの《裁》など、 そもそも《ジャギラ》プレイまで辿り着けない展開も多かった。

この環境は、デュエプレ史上最もハンデスが撃たれていた環境である。 どのデッキを握るにせよ、 10ターン目が来る前に相手の《ボルバルザーク》および《ロスソ》を叩き落とすのが重要だった。

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5弾後半~6弾

バランス調整によって、《タッチ》《汽車》は骨抜きにされた。 序盤のハンデスと《ボルバル》が消えたことで、【青黒ボルバル】はデッキタイプとして消滅した。

dmps.takaratomy.co.jp

6弾環境では、インフレしたテーマデッキがいくつか出てきた。 そのうち、【アウゼス】【ドルバロム】【ターボ/除去サファイア】は、 いずれも9~10マナを目指す遅めのデッキだった。それゆえ、ハンデスが付け入るスキがあった。

《ロスト・チャージャー》《コメット・チャージャー》の追加で、コントロールが3→5のマナカーブを獲得。 5マナの《アクアポインター》が、【青黒ドルバロム】【除去サファイア】【4c天門】の優秀な繋ぎ役として3~4積みされていた。

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コントロールミラーにおいては「先攻《ロスソ》ゲー」が加速。 10ターン待つ必要のある《ボルバル》と違って、《サファイア》は10マナに到達しさえすればよい。 チャージャー連打からさっさと《ロスソ》を撃って《サファイア》を出すというゲームになっていた。 以前のコントロールミラーだと、 《エリクシア》《ボルバル》の先出しで圧をかけるという選択肢があったのだが、 【天門】が緑を抜いて4c型になったせいでその駆け引きは失われた。

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6弾は《ジェニー》が登場した弾でもある。 《ジェニー》は《アルファディオス》《バーロウ》《ツヴァイランサー》を引き抜けるメタカードとして一定の注目を浴びたが、 基本的には《ポインター》《ガレック》でより大きなアドバンテージを取る方が優先された。

メタゲームには絡まなかったが、この頃から《口寄の化身》《ストリーミング・チューター》など、 一度プレイできればハンデスを突き放せるようなドローソースも収録されるようになってきた。

7~8弾

7弾で、とんでもなく強いデザイナーズデッキの【アポロヌス】【メカオー】が登場した。 【ツヴァイ】も《マーキュリー》を手に入れ、それらの仲間入りを果たした。 f:id:mikegamo:20210526193825j:plain

《アクアポインター》を1回出した程度では止まらないエンジンを抱えたデザイナーズデッキに、 コントロールデッキは対抗する術が無かった。 《超神星》は、5~6ターン前後に出てくるゲームエンド級のフィニッシャー。 そこに《ロスソ》が間に合うはずもない。

一応、これらの展開コンボをガンメタしたコントロールを組むことはできたが、 その構築は速攻や【ブリザード】に脆すぎる。

ハンデスを撃つデッキそのものが弱すぎた時代である。

8弾~8弾EX

《のろいとテラーの贈り物》《封魔魂具バジル》《電磁傀儡ポワワン》の組み合わせが収録。 他にもグッドスタッフカードが充実したことで、コンボデッキが抑止された。 7弾環境に比べると、ハンデスを撃つ余裕は出てきている。

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一方で、ハンデスを好きなだけ撃てるかというとそうでもない。 環境トップの【ゲオアガピ天門】は、《連珠の精霊アガピトス》《超鎧亜キングダム・ゲオルグ》で、 打点を簡単に揃えられる。7マナで場に待機できる《竜極神》の存在も大きい。 以前の【天門】と違って攻撃力が上がっているので、《ロスソ》に怯えることも少なくなった。

また、撃てればハンデスをガン拒否できる【テクノロジー】も、8弾環境で台頭。

コントロール環境でありながら、ハンデスが有効に働くタイミングは、 6弾の頃と比べるとかなり少なくなった。 別の言い方をすると、8弾環境でコントロールが強くなれたのは、 ハンデスよりも強力なカードを手に入れたからである。

メジャーデッキでハンデスが多めに入っているのは、【赤黒のろテラコン】のみ。 それ以外では、メタカードとしての《ガレック》《ロスソ》、スペース埋めの《ポインター》が、 ちょろっと入っているくらいに落ち着いている。

9弾環境

《腐敗無頼トリプルマウス》《腐敗聖者ベガ》の2枚が収録。 入れ替わりで、《アクアポインター》《ガレック》がNDからスタン落ち。

《キング》《クイーン》を入れたネクラカラーのコントロールが、ND環境の主流となるか。 王道のクローシスカラーのコントロールは、主戦場をADに移すことになりそうだ。

おわりに

記事テーマをぼんやり考えながら執筆し始めたら、筆が暴れて収集がつかなくなった。 12,000字を超えていたのを再構成して、約7000字まで圧縮して投稿した。

ハンデスが弱い今のデュエプレでは、「使われたくないカードを先に落とす」という思考を持つこと自体が、 ゲーム性に逆行している。 ハンデスは「たまたまキーカードを抜けたらラッキー」くらいの期待度で使って、 基本的には「出てきたものをどう処理するか」という発想でいたほうが、 環境に通用する良いデッキが思い浮かびやすいかもしれない。

*1:相手の手札が1枚ならばゴッド・カードを落とせる